リドックス物語

Tokyo Real Estate Freshman Story

前回までのあらすじ

リンクエステートに入社後、「不動産仲介事業部 住宅チーム」の配属となった高木。

住宅チームのリーダーである佐川から「リンクエステートの組織」や「不動産管理業務」「管理契約の委託形態」などといった【不動産管理】の基本のキとなる部分についてレクチャーを受ける。

具体的な業務を経験していないため、佐川のレクチャーをなかなか上手くイメージを持つことができずにいるが、それでもなんとかついていこうと必死にメモを取っていく高木。

まだ、高木の不動産マンとしての人生は始まったばかりだ・・・。

第2話 入居者募集【一般媒介と専任媒介】

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早朝から出勤

・・・ふぁ〜。
全然眠いけど、まだ配属されて2日目だからやっぱり早めに出社しといたほうがいいよな。
(こういうところからアピールや競争はすでに始まっているのだ。フッフッフ。。。)

ガチャ。

おはよう。
高木くん、今日も出社してくるの早いね。

あ、おはようございます!!
佐川さんっていつもこんなに早いんですか?

そうだね。
大体、7時30分くらいにはいつも来てるかな。
あ、でも、僕が早く来てるからって別に早く来たりするの必要はないよ。業務開始時間にちゃんと仕事を始められたらそれで大丈夫だから。

了解です!!
自分も朝は強い方なんで頑張っていきます!!

まぁ、続けることが大切だから、早く自分にあった働き方を見つけるのも大事かもしれないね。
今日は、10時から第2会議室を取ってあるからそこから昨日の続き始めよう。それまでは、自由にしてていいから。

わかりました!!

そう言いながら、佐川はいくつかのファイルを抱えてどこかへ行ってしまった。

・・・自由にしてていいよと言っても、まだやることないんだよな。
昨日、佐川さんにこの会社《リンクエステート》のこと教えてもらったからネットでちょっと調べてみよう。

ーーーーリンクエステート 2001年創業 現在、社員数86人
ーーーー総管理物件数 193棟
ーーーー1都3県(東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県)の賃貸物件を中心に不動産管理業務を展開
ーーーー賃貸管理から空室募集・修繕、リノベーション工事など「不動産」に関わる業務をワンストップで提供できるのが大きな特徴
ーーーー中でもテナント誘致(リーシング)業務に定評があり、不動産再生事業を得意としている

リーシングに定評があるってことは、「不動産仲介事業部」の仕事が評価されてるってことか。
・・・昨日、佐川さんが「賃貸収益に直結してくるテナント募集業務に力を入れている」って言ってたもんな。

それに、就活の時にHPに「ワンストップサービスが魅力」って書いてあったから、そのまま面接の時に「御社のワンストップサービスが〜〜」とか言っちゃってたけど、これって具体的にはどういう意味なんだろ?今日、佐川さんに聞いてみよう。


会議室にて

ーーーー10時 リンクエステート第2会議室

じゃあ、10時になったし始めて行こうか。
昨日はこの会社《リンクエステート》のことや不動産管理の全体像についての説明だったけど、今日は不動産仲介事業部の目的や仕事内容について説明していくね。

よろしくお願いします!!
そういえば、ネットでうちの会社のこと調べたらリーシング業務に定評があるって書いてありましたよ。

そうだね。
今では「不動産のワンストップサービス」を提供している会社としてアピールしているけど、もともとはリーシングをメインにやっていた会社だからね。

そうだったんですか?

今は200棟くらいの管理物件があるくらいになってるけど、まだ僕が入社する前の、つまりリンクエステートが出来たばかりの時はまだまだ小さくて実績もない状態だったから管理物件なんて1つもなかったんだ。

じゃあ、どうやって管理物件を増やしていったんですか?

リンクエステートの一番最初のオーナー、つまり最初のクライアントはこのビルのオーナーさんだったんだよ。
今では、8階まであるこのビルも全部埋まっているけど、当時は1F・2F・7Fしかテナントがいなくて、1Fと2Fのテナントも解約を出していて本当に大変な状況だったんだ。

1Fと2Fのテナントさんがいなくなったら、7F以外のフロアは全部空室ですもんね。

そんな状況だったオーナーさんの共通の知人から紹介をうけてビルのリーシングについてオーナーさんに提案したところから「じゃあ、募集だけお願い」というのが一番最初の業務だったんだ。
そこから、大川部長が様々な提案やリーシングを行って、それが上手くはまって4F以外のフロアを半年くらいで成約することができたんだ。

・・・半年で一気に6フロアもすごいですね。

大川さんからあの時は必死にやったって話を伺ったよ。
その成果が認められて、最後にオーナーさんからこれからもいろいろお願いしたいからということで、4Fにリンクエステートが入って満室になって無事に募集は完了。
その時にオーナーさんから「募集だけでなく建物自体の管理もお願いしたい」となって、これがリンクエステートにとって不動産管理の記念すべき第1棟目となったわけなんだ。

・・・リンクエステートの立ち上げの時にそんなドラマがあったんですね。

この案件がきっかけで、オーナーさんから「リンクエステートはリーシングが強いから」という形でさまざまな方を紹介して頂けることが増えてきたんだ。
そして、紹介してもらった案件をどんどん成功させながら、管理物件を増やしていったというのがリンクエステートの創業期になる。
そこから、リンクエステートは「リーシング強い」と評価されるようになって、今でも会社としても力を入れている部分なんだ。

そんな部署に配属されたってことは、自分も頑張っていかないとですね!!

そうだね。
この会社の仲介事業部は経験のある中途の人がほとんどなんだ。その中で「新人を育てて文化を作っていく」のがこれから大切であると、3年前から新卒の1人は仲介事業部に配属されるようになったんだ。

・・・文化を作っていく。
なんか難しそうですが、自分もこれまでの先輩に負けないように頑張っていきます!!

難しく考えなくても、できること頑張っていけば大丈夫だよ。

了解です!!

ちょっと話が横道に逸れちゃったけど、せっかくだからこのビルのリーシングに絡めて解説していくね。
まず、「当時、このビルは埋まらなかった原因」は何だと思う?

・・・そうですね。
このビルは駅からも近いし、それなりに綺麗だからそのあたりじゃないと思うんですよね。

そうだね。
オーナーさんもこのビルに愛着を持たれているから、当時も定期的に掃除などもしっかりされてたらしいね。

じゃあ、何だろう。
・・・あっ!?「前の管理会社の営業力が無かった」じゃないですか!?

イイ線ついてきたね。
原因は複数あったみたいだけど、大きな原因の一つが「一般媒介」で募集を依頼していたということだったんだ。

・・・一般媒介ですか?
宅建の勉強した時に出てきたような気がするような、しないような。。。

・・・その様子だと宅建は落ちたみたいだね。

いやっ、勉強はしてたんですが、バスケの練習やバイトがあったりしてなかなか時間が無かったりして。

まぁ、今年ちゃんと取ればギリギリセーフだから、今年は頼むよ。

は、はい!!

まずは入居者の募集だけど、これには「自分で探す」と「不動産会社に依頼する」の2つの方法がある。「自分で探す」については、もうその通りだから説明は省くね。

オーナーさんが、知り合いとかを辿って自分で探すってことですもんね。

「不動産会社に依頼する」場合なんだけど、募集を委託する契約には「一般媒介契約」「専任媒介契約」「専属専任媒介契約」の3種類がある。
「専任媒介契約」と「専属専任媒介契約」はオーナーさんが自分で探していいかどうかが違うくらいだから、今回は「一般媒介契約」と「専任媒介契約」の違いについて説明していくね。
それぞれの細かい違いについては、宅建の勉強を兼ねて自分で勉強しておいて。

そう言いながら、佐川はホワイトボードに図を書き始めた。

一般媒介契約

一般媒介契約というのは、特定の不動産会社などに限定せず幅広く複数の不動産会社に客付けの依頼をすることなんだ。
「客付け」というのは、物件を借りたいお客さんを見つけてくることを指してるから覚えておいてね。

この図を見ると、オーナーさんが直接不動産会社に営業するような形なんですね。

そうだね。
オーナーさんが直接の窓口になって、色々な不動産会社に物件情報を持ち込んで客付けをお願いすることになる。
一般媒介のメリットとしては複数の不動産会社に客付けを依頼するため、幅広く情報が公開できるというところがあげられるかな。

さらに佐川はホワイトボードに新しい図を書き始めた。

専任媒介契約

専任媒介契約は特定の1社の不動産会社に客付けを依頼することになる。

でも、これだったら集客できるお客さんの数が圧倒的に少なくなったりしませんか?

そうなんだ。
こうなってしまうと、よっぽど自社で集客力のある会社しかできないことになってしまう。
だから・・・

そう言いながら佐川は【専任媒介契約】の図に新しい図を書き始めた。

専任媒介契約

この図のように専任の不動産管理会社が新たに一般媒介として色々な不動産会社に客付けをお願いしていくという形を取るんだ。

確かにこれだったら、一般媒介の時と同じようにたくさんの不動産会社さんからお客さんを紹介してもらえるようになりますね。
でも、これだったら、リンクエステートがいる意味ってないんじゃないですか?
余計に一社入っちゃっただけになるんじゃ・・・?

この図だけ見れば確かにそうだね。
オーナーさんといっても、色々な属性のオーナーさんがいるって話を昨日したのは覚えてるかな。

バッチリ覚えています!!
ということは・・・あ、そうか!!

気が付いたかな。
お客さんに物件を紹介する際に、必ずその物件が空いているかを確認する。その際に、対応できなかった場合はどうなるだろう。
もしかすると、目の前にお客さんがいる状態なのかもしれない。

それだったら、その物件は諦めたり別の機会にするかもしれないですね。

そうなると、貴重な物件紹介をしてくれるチャンスが減ってしまう可能性がある。
もちろん、不動産会社でも電話が鳴りまくって電話に取れないということもあるけれど、大抵は対応できるからね。

じゃあ、このビルのオーナーさんも一般媒介で自分が窓口なんだけど、サラリーマン大家さんとかで対応がちゃんとできなかったのが原因ということだったんですか?

いや、このビルのオーナーさんは他にも物件を複数持っている専業の不動産投資家なんだ。
だから、反響を取り逃がすというのは少なかったと聞いているよ。

では、どうして・・・?

その理由は、オーナーさんは不動産投資家で管理もしているけど、宅建業者ではなかったからーーー。

ーーーーコンコン。

ん??
ちょっと待ってね。

ガチャ。

ーーーーすいません。12時からここ自分たちが使うので、、、

あー、もうこんな時間か。
今、空けるからちょっとだけ待ってて。

高木くん、ホワイトボード消して会議室片付けてもらえる。

了解です!!


廊下

ちょっと、時間が足りなかったね。
次は、14時から同じ会議室でとってあるから続きから始めよう。
ちょうどいいから、お昼ご飯の間に空室が埋まらなかった原因考えてみて。

わかりました!!
・・・あの、、、ヒントなどを頂くことはできますでしょうか。

ヒントか・・・。
ちょっと言いかけたけど、オーナーさんは自主管理されてたんだけど、宅建業者ではなかったんだ。それがヒントだね。
あと、これから説明しようと思ってた「レインズ」についても関わってくるね。

「一般媒介」「宅建業者ではなかった」「レインズ」というのがヒントですね。
・・・頑張って考えてみます!!

名推理を期待してるよ!
じゃあ、また午後から。

果たして、高木は佐川からの宿題の回答に辿り着くことはできるのか!?

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