リドックス物語

Tokyo Real Estate Freshman Story

前回までのあらすじ

不動産管理会社であるリンクエステートの創業期についての話や、空室募集における2つの委託契約「一般媒介契約」と「専任媒介契約」についての解説を受けた高木。

そこで、住宅チームのリーダーである佐川からリンクエステートの初受託のリーシング案件となったビルが空室が長期化していた原因について考えておくようにと宿題を与えられる。

専業の不動産投資家として反響にもしっかりと対応していたオーナーさんが運営していたのにも関わらず、空室が埋まらなかったその理由は?

佐川からもらった「一般媒介」「宅建業者ではなかった」「レインズ」といったヒントを元に課題に取り組んでいる高木であった。

第3話 長期空室の理由は?

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宿題を考え中

・・・うーん。
「考えてみます!!」と息込んだのはいいんだけど、この問題なかなか難しいな。ヒントの一つの《レインズ》について復習しておこう。

ーーーーレインズ(REINS)とは、Real Estate Information Network System(不動産流通標準情報システム)の略称で、国土交通大臣から指定を受けた不動産流通機構が運営しているコンピュータ・ネットワーク・システムの名称。
ーーーー指定流通機構の会員不動産会社が不動産情報を受け取ったり情報提供を行うシステムで、会員間での情報交換がリアルタイムで行われています。
参考URL:REINSとは | 公益財団法人 東日本不動産流通機構

不動産会社がお客さんから問い合わせを受けてアパートやマンションを探すときは、まずはこの「レインズ」を見るから、賃貸管理会社は絶対にレインズに物件情報を登録しておかないと決まらないって研修で言ってたな。

・・・ということは、このビルのオーナーさんは宅建業者じゃないからレインズに物件情報を載せることができなかったから空室のままだったっというのが答えなのかな?
よし!そろそろ昼休みも終わるしこの答えで行こう!!


午後からの募集業務研修

じゃあ、午後の研修を始めて行こうか。
高木くん、最後に出した問題「このビルの空室が長期化した理由」についてはわかったかな?

はい!!
ここのオーナーさんは専業の不動産投資家ではあったけど、宅建業者ではなかった。そのため、このビルの物件情報をレインズに登録することができず、他の不動産仲介会社に見つけてもらうことができなかったから。だと思います!!

おっ。今度はちゃんと配属前の研修の話を聞いてたみたいだね。
イイ線ついてきてるよ。

ということは、僕の答えで正解ってことですか!?

惜しいけど、点数としては70点といったところだね。
空室の募集について、全てオーナーさん自身が行っていた場合だったらそれが正解であることが多いんだけど、このオーナーさんは一般媒介で他の複数の不動産会社にも募集業務をお願いしていたからレインズには物件情報は登録されていたんだ。

んー、あと一歩考えが及ばなかったのか。。。
では、ちゃんとレインズに物件情報が掲載されていたんだったら、他の理由があるということですか?

「レインズに情報を載せる」というところまでは合っていたんだけど、そこからもう一歩だったね。
一口に「レインズに情報を載せる」と言うけど、情報は載せてさえいればそれでいいのかな?

・・・どういうことですか??

「ちゃんと情報を登録する」
これは、「ちゃんと正しい情報を登録する」という意味でもあるんだ。
部屋探しのポータルサイトで「このマンションイイな!」と思って問い合わせたら、「もう募集はしていません。」とか回答されたことは無い?

ありました!!
自分は就職でこっちに上京してきたので、ポータルサイトとかホームページを見て不動産屋さんに問い合わせても、「もう決まってるみたいですね」とか言われて全然いいマンションが見つからなかったんです!!

そうなると、「じゃあ、違う不動産会社に言ってみよう」となるだろ?
それと同じようなことが、このビルの物件情報の登録状況でもあったんだ。

・・・レインズ上に正しい物件情報が載ってなかったということですか?
でも、レインズみたいな宅建業者間でもそんなことってあるんですか?

通常ではありえないことだよ。
でも、多数の不動産会社に「一般媒介」で委託していたことでそんな状況が起こってしまったんだ。
もう一度、一般媒介の図を書いていくね。

一般媒介契約

このように、一般媒介ではオーナー自身が不動産会社に物件情報を提供していく。そして、その情報をもらった不動産会社が各々レインズに登録していくんだ。
ここで、賃料の改定やキャンペーンの実施などで募集状況が変わった場合はどうなるだろう?

また、オーナーさんが不動産会社を回って「募集状況を変えました!!」って図面を渡しに行ったりします。

その通り。
じゃあ、もしここで前回お願いしていた不動産会社に「募集条件が変わりました」ということを伝えるを忘れてしまった場合はどうなるだろう?

募集条件が変わったことは知らないままなので、条件が変わる前の図面を登録し続けることになります。
・・・あっ、そうやって募集条件の表示が会社によってバラバラになっていってしまうのか!!

そうなんだ。
しかも、さらに一般媒介で委託された不動産会社が一般媒介として他の不動産会社に情報を提供した場合は、もう誰にどの情報が伝わっているのかわからない状況になってしまう。

伝言ゲームみたいに、又聞きの又聞きみたいになって、最初の内容と全然変わって伝わってしまうようなイメージですね。

そんな風になってしまうと、正しい情報が何かわからなくなってしまい、仲介業者としては「それだったら、他の物件を紹介しよう」という考えになってしまうのはある意味当然とも言えるよ。
しかも、オーナーさんは宅建業者じゃないからレインズを見ることができず、自分の物件がどのような形で登録されているかチェックもできないからね。

ただ情報が登録されているんじゃなくて、「正確」な情報が登録されていることが大切なんですね。
でも、これってどうやったら解決できる問題なんですか?

こういった場合、専任媒介契約を結んだ不動産会社が情報を取りまとめることで募集情報の交通整理を行うんだ。

専任媒介契約

レインズに募集情報を登録するのは専任媒介を結んだ不動産会社のみにする。この図の場合だと、レインズに登録するのはリンクエステートだけだね。
そうした場合、賃料改定などがあった場合でもリンクエステートが情報を更新すれば公開されている情報もちゃんと更新されるということになるんだ。

確かに、専任媒介として情報を整理すれば、各不動産会社によって把握している情報が違うなんてことも無くなりますね。
お客さんが「申し込みをしよう!!」となっても、「実はこの条件じゃないんです」なんてなったら大変ですもんね。

そうなんだ。
当時のこのビルの登録状況は、募集条件だけでなく面積や募集している区画と実際の間取りが違うなんてこともあったと聞いている。
せっかくお客さんを案内してもらったのに、図面と間取りが違うとなって、次から紹介してもらえなくなったケースもあったみたいなんだ。

それは確かに空室も埋まらないというのも納得できますね。

そういった状況を踏まえて、リンクエステートが専任媒介として情報の取りまとめを行い、正しい募集情報を不動産仲介会社に浸透させたことで反響や成約率を上げることができたんだ。

より多くの不動産会社さんに募集をお願いできる「一般媒介」の方が早く空室が埋まるんじゃないかって思っていたんですけど、そうでもないんですね。

そうだね。
賃貸においては、専任媒介契約でも図に書いたのように専任媒介の不動産会社がさらに他の不動産会社に募集情報を発信していくというスタンスが多い。
だから、結果として一般媒介で各社にお願いするのと同じような状況を作り出すことができるね。

ということは、一般媒介でお願いするよりも、専任媒介でお願いする方が早く決まる可能性が高いということですか?

もちろん、置かれている状況などによって判断は変わってくるけど、個人的な意見ではできるだけ専任の不動産会社を入れた方がいいと思ってる。
ただ、発信できるのが専任の不動産会社だけになるから、その担当者がサボっていたりすると募集していないに等しい状況になってしまう。
それだけ、専任で募集を任されていることは責任があるということを意識しないといけないね。

確かにそうですね。
1社だけに募集を任せるということはそういうことなんですよね。

オーナーの大切な資産を預かっているという自覚を持つということは、賃貸管理を行っていく上で大切な意識だから、今の気持ちを忘れないようにね。

了解です!!

大分、長くなってしまったけど仲介事業部の仕事内容についてはイメージできてきたかな?

徐々にイメージがついてきました。
募集物件の情報を正しく、より多くの不動産仲介会社さんに伝えてお客さんを紹介してもらう。というのが僕たちの仕事ということですね。

その通り。
他にも、キャンペーンの提案や周辺賃貸相場の調査や契約条件調整といった業務もあるけど、まずはより多くの不動産会社に担当の物件を紹介してもらう環境を作るのが第一だね。

まだまだ、覚えないといけないことはたくさんありそうですね。

そうだよ。
あくまで、僕たちの目標は「稼働率の向上」つまり、「空室を埋める」ことにあるんだ。
情報発信や業者さん回りもそのための一つの手段に過ぎない。そこをおろそかにしてはいけないけれど、そこだけに捉われてしまってはいけないんだ。

・・・つまりは、紹介してもらうだけじゃなくて契約してナンボ!ということですね。

・・・ざっくり言えばそうなるね。
まぁ、その辺りは実務をこなしながら勉強していこう。
じゃあ、今日はここまで。明日は僕について実際に仲介会社を回るから準備しておいてね。

とうとう、営業デビューということですね!!
気合い入れていきます!!


廊下にて

明日は、初の外回りかぁ。
いよいよ、社会人って感じになってきたな。
爽やかな感じを出して頑張っていくぞ!!

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