「部屋にカビが出て困っているんです。これって、私がなんとかしないといけないものなのでしょうか?」
先ほど、入居者さんから室内のカビ発生対応についてのクレームがありました。
部屋の換気とかをこまめにやってもらうとかをお願いするしかないかな?と思うんですが、こんな時はどう対応すれば良いでしょうか?
日本は高温多湿な国で特に梅雨の時期などはエアコンの利用などと相まって室内で多量の結露が発生することも少なくありません。また、賃貸管理を行っていると雨が多く、気温も湿度の高い季節になると貸室からカビがわいてしまったというクレーム連絡の経験はありませんか?
特に小さなお子さんがいらっしゃる家庭などではカビは喘息など呼吸器系の病気の原因になることもあり、過敏に反応される方も少なくなく、それが契約解約の原因になることもありえます。
また、解約にならない場合でも、カビがわいた部屋に住んだことで「精神的苦痛を受けた」l慰謝料を請求されるなんてケースもなかにはあるようです。
今日は、「貸室内でカビが発生してしまった時の対応方法」について紹介していきましょう。
貸室内でカビが発生!?対応策として必要なことは?
物件の築年数や立地している地域・気温・湿度などにも影響を受けますが、貸室内でカビがわくということは賃貸管理を行っていると少なからず発生するケースであるかと思います。
日常生活を行っていくなかで、わずかなカビが発生する可能性はもちろんありますが、賃借人からクレームとなってしまった場合には大家さん(賃貸管理会社)側とすれば、「借家人に対して貸室を使用できる状況で提供する義務」があるため、なんらかの対応を行わなければなりません。
では、その対応方法について見ていきましょう。
まずは、発生しているカビの程度を特定
一言にカビが発生していると言われても、その程度は様々です。
多くは、浴室や水周りなどの湿気がたまりやすい場所にのみ発生している場合よくあるケースです。もちろん、場合によっては玄関など通常カビが発生しにくい通気性の良い場所にまでカビが大量に発生するケースもあります。
まずは現地調査を実施し、カビの状態を把握しましょう。
特に被害状況が酷い時には、雨漏りや排水管の破損など発生要因が設備の故障によるものではないかをしっかりと確認する必要があります。
確認を行う際に大切なことは「先入観を持たないこと」です。
経験豊富な賃貸管理担当者さんなどであれば、「入居者さんがろくに換気もせずに住んでるからじゃ無いの?」と頭によぎることもあるかと思います。
ただ、そんな先入観を持っていると、配管の不具合や浸水はしてこないけど天井裏で漏水しているなどの可能性を見落としてしまう可能性があります。まずは、まっさらな気持ちで貸室の状況を確認しましょう。
次に、貸室の利用状況を確認
基本的に、マンションにおけるカビの発生原因のほとんどは「結露」によるものです。
どうしても、マンションなどの集合住宅は一戸建と違って、気密性が高いため結露の問題は避けにくいものです。特に梅雨の時期や夏の台風による長雨の時期などは発生する確率が増えてしまいます。
ここで注意しなければならないポイントは、入居者さんの貸室での生活環境です。
- 「お風呂の浴槽に常に水を張っている」
- 「掃除を濡れた雑巾で水拭きしたまま放置している」
- 「換気をしない」
- 「結露に気づきながら放置していた」
といった環境下である場合は、当然カビの被害が発生する可能性は高くなります。
どのように貸室を利用しているのかという部分は注意が必要な部分であり、該当する場合は入居者さんに生活環境の改善の協力をお願いする必要があります。
カビキラーなどで一次対応
発生しているカビの状態を確認し、生活環境の確認を行ったら、カビの対策としてハイターやカビキラーなどのカビ取り用洗剤で一次対応を行ってもらいます。
特に、カビが生えている辺り(出来るだけ広く)に洗剤を頒布し、30分から1時間後に清潔なぞうきんで拭き取り、さらに、もう一度噴霧して拭き取りをします。これをすることで、カビが除去出来ます。
生活環境の改善とこれらの一次対応でカビの発生が収まるかどうかを確認していきます。
それでもカビの発生がおさまらない場合は、クリーニング業者に相談
貸室の利用方法の改善と一次対応を行っても改善されない場合は、カビ取り業者などの専門家への相談をお勧めします。 また、カビの発生は1部屋のみで発生しているのか、それとも他の部屋でも発生しているのかは必ず確認しておきましょう。
自己対応して不動産管理会社には連絡していないだけで、実は他の部屋でも頻発しているというケースもありますので、少なくとも上下左右の階の入居者へヒアリングを行うことをお勧めします。
※ヒアリングの際には、他の入居者を不安にさせないように住環境に関するアンケートといった形をとるのが良い場合もあります
より大きなクレームになった場合はどう対応するのがいい?
より重篤なカビの被害が発生したトラブルで時々あるのが、以下のようなクレームです。
- カビがわいていた間に貸室に住めなかったので、ホテル代を補填してほしい
- カビ臭い部屋で寝なければいけない精神的苦痛や工事などでの不便さに対して賠償請求したい
排水の漏れなど建物自体(建物設備)に明確な落ち度があった場合には、クレームから費用補填の請求を受ける可能性は高くなります。
しかし、こういった場合にこそ落ち着いて対応することが重要です。
ホテル代など、カビ被害によって貸室以外の部屋を用意した費用を請求された場合
建物の欠陥など貸主に明確な落ち度がある場合には、修繕費用はもちろん、その期間中に発生したホテル代や病院代などは負担しなくてはなりません。
ただし、費用負担をする際には、それを客観的に証明できるもの(ホテルの領収書や病院の診断書等)を提出してもらいましょう。また、これらのやりとりについて、口頭で行った場合、後から反故にされる可能性があるため、必ず書面に残る形で対応を進めていくことが必要です。
精神的苦痛に対して、慰謝料を請求された場合
一般的に、物理的な瑕疵(カビの発生)について、「物理的な瑕疵が修復された段階で、それに伴う心理的な瑕疵も修復される。」と法律上は解釈されます。
つまり、漏水などによってカビが発生した場合に、その原因である漏水やカビ被害が物理的に修復された段階で、心理的な瑕疵も修復されたと解釈されるので精神的な慰謝料を請求することはできません。
ただし、健康被害などの実害については賠償の責任はあります。
ただし、ここまでくるとその他の要因も絡まった個別ケースとなりますので、弁護士等の専門家へご相談されるのが良いでしょう。
入居者さんにも「善管注意義務」があり、状況によっては対応方法も変わります。
前述の通り、大家さん(不動産管理会社)には、家賃の対価として「借家人に対して貸室を使用できる状況で提供する義務」があります。
それに対して、入居者さん自身も「善管注意義務」といって、貸室を適切に利用する義務を負っています。
設備の故障や建物構造上の問題であれば、貸主の責任範囲でありますが、「結露しているのを放置していた」「お風呂のお湯を張りっぱなし」などの借主の生活行動が起因して発生したものについては、借主自身で対応する責任があります。
事実、国土交通省が発行している原状回復のガイドラインにおいても、結露によるカビ、シミは大家さんや管理会社に報告が必要で、手入れを怠り放置してカビやシミをつくってしまった場合は自然損耗と認められず、原状回復費を支払わなければならないとされています。
「善管注意義務なのだから」と突き放した対応をすべきではありませんが、「誰の責任範囲であるか」ということは、貸主・借主双方が理解して、一緒にトラブル解決に向けて協力していくように対応を進めていくことが不動産管理会社としては求められています。
まとめ
ここまで、「カビが発生しているのでなんとかしてほしい!」と連絡があった場合の対応方法について解説していきましたが、一連の対応については不動産管理会社と入居者さんが協力をしながら解決していくことが必要となってきます。
もしも、建物設備の故障・不具合が原因でカビが発生、健康被害が出てしまった場合などについては、貸主がその費用を賠償する責任が発生します。
一方で、借主にも善管注意義務があり、その貸室を借り受けている立場であるため、自分自身でも予防や対応を行うことが課せられています。
気温や湿度などの外的要因によって左右されやすいカビ発生問題については、原因の特定がなかなか難しいため、大家さん・入居者さんが協力して解決に向けて対応できるように間を取り持つことがマンションやアパートの管理会社として求められる部分ではないでしょうか?
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