この前、マンションを見に行ったら〇〇号室の人は、複数人で住んでるみたいな様子なんです。
申し込みの時は、一人で住むって言っていたんですけど、不動産管理会社さんは何か聞いていますか?
ここは、単身者用だけど、ちゃんと申請してくれたら別に複数人でもいいと思うんだけど、その辺りはどう判断したらいいんだろう?
賃貸マンションで不動産仲介業者さんに入居者を紹介してもらって賃貸借契約を締結することまでは良かったのだけど、入居後、いつの間にか入居者の数が増えてしまっていた。
賃貸管理を行っている上でこんなケースに遭遇することもあるかと思います。
今日は、契約書に記載されている入居人数よりも入居者が増えてしまった事例について解説していきます。
賃貸借契約の内容と事実状況の確認
契約時に申告していた入居人数よりも増えてしまっていた場合にまず確認することは、これからどのように対応していくかという対応方針についてです。
賃貸マンションの大家さんの中には、「賃料さえキチンと払ってくれたらあとは任せる。」「契約書に書いてあることに違反しているのだから、即時契約解除したい!!」など不動産オーナーによって判断が違う場合があります。
とは言っても、不動産管理会社としては、大家さん(不動産オーナー)が良いと言っているから放置するというのも得策ではない場合があります。
ファミリー用の賃貸物件で「出産による入居人数の増加などを連絡し忘れていた」といった事例であれば特段問題はないかと思いますが、ワンルームや1Kなどの単身物件で複数人が大家さんに黙って入居している場合は注意が必要です。
大家さんや賃貸管理会社に言えない事情があるから黙って入居させている可能性があるため、契約者の属性や与信に不安があるかもしれません。また、ゴミ出しや入居マナーなどが悪い、同じ物件の入居者からのクレームという可能性もあるため、なんらかの措置を取ることが必要となる可能性があるためこういった違反者への対応については注意が必要です。
入居人数についての契約違反で賃貸借契約の解除はできる?
結論的に言えば、入居人数が契約書の記載内容と違うからといって大家さんの方から一方的に契約の解除を行うことはできません。
このブログでも解説したことがある「無断転貸」の場合と同様のことが言えます。
重複する内容ではありますが、おさらいを兼ねてもう一度見てみましょう。
まずは、無断転貸についての条文(民法第612条)を見ていきましょう。
民法第612条
- 賃借人は、賃貸人の承諾を得なければ、その賃借権を譲り渡し、又は賃借物を転貸することができない。
- 賃借人が前項の規定に違反して第三者に賃借物の使用又は収益をさせたときは、賃貸人は、契約の解除をすることができる
出典URL:wikibooks - 民法第612条
今回の入居人数の増加は「転貸」している訳ではありませんが、第2項の第三者(契約者以外の入居者)に貸室を使用させているという状況に当てはまります。よって民法上は賃貸借契約の解除事由に該当すると考えられます。
しかし、一方で最高裁昭和28年9月25日判決に「賃借人が賃貸人の承諾なく第三者をして賃借物の使用・収益をなさしめた場合でも、賃借人の当該行為を賃貸人に対する背信行為と認めるに足らない特段の事情のあるときは、賃貸人は本条2項により契約を解除することができない。」という判例があります。
これにより、無断転貸は契約の解除事由にあたりますが「背信行為と認めるに足らない特段の事情」がなければ契約を解除することはできないとされています。よって、入居人数についてを契約違反として賃貸借契約の解除は難しいと言わざるを得ません。
そのため、賃貸管理会社が現実的にとれる対応方法としては、以下のような方法が考えられます。
- こつこつと契約違反について説明し入居に納得してもらい退去してもらう
- 定期借家契約に変更して、更新はせず、退去してもらう
上記のように、契約を締結してから大家さんの方から賃貸借契約を解除するのは非常に困難なこととなっています。そのため、できるだけ入居審査の際にしっかりと与信のチェックやテナント属性についてチェックし、きちんと契約内容を遵守するテナントを入居させていくことが必要となってくると考えられます。
まとめ
ここでは、「入居人数1人として貸し出したのに、無断で複数人で入居している場合の対応方法」「契約違反として貸主からの契約解除は可能かどうか」について解説していきました。
マンションやアパートの管理会社としてまず行うことは契約内容の確認です。
契約書内に「契約者以外の入居禁止」や「貸主の承諾なく転貸をしてはならない」といった内容の記載があることが対応における大前提です。
※これらの禁止事項についての条文がない場合は、対応は非常に困難を極めます。
契約の解除についてですが、無断で入居人数を増やしていた(契約違反がある)としても、貸主から即時解約することは難しいといえます。
貸主側から契約解除をするには、「なんども注意しても改善されない」「他の入居者に迷惑をかけている」「信頼関係が破壊された」などの事由が賃貸借契約を解除する要件となってきます。
長期化しやすい案件とはなってしまいますが、こつこつと契約違反について説得を行い違反者が自発的に解約するように説明していくことが対応方法として挙げられます。
※脅迫まがいのことをすると、逆に管理会社側が不法行為を行っているとされてしまうので、十分に注意を払って対応する必要があります。
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