賃貸住宅での高齢者の孤独死が増加しています。
日本の超高齢化社会の進行について、厚生労働省は2015年をピークに日本の人口は減少し、2055年には総人口は8674万人となり内39.9%が高齢者になるという見解を発表しました。
実に人口の40%が高齢者という時代が現実に迫ってきている中、大きな社会問題となっているのが、アパートやマンションといった賃貸住宅での「ひとり暮らしの高齢者の孤独死」です。
賃貸住宅での孤独死の発生状況
以下、一般社団法人「日本少額短期保険協会」が調査した「孤独死の現状レポート」の内容です。
以下のリンクから原文を読めますが、賃貸住居内における孤独死の発生状況を詳細に解説しているので、賃貸管理会社の方は一読の価値がある内容だと思います。
孤独死の現状レポート - 一般社団法人「日本少額短期保険協会」
では、上記報告の内容をわかりやすくまとめていきます。
まず、下のグラフは孤独死の発生件数が最も多い東京23区内での発生件数の推移です。
※「孤独死の現状レポート」の内容をもとにBambooboy社が作成
年度によって若干の増減はありますが、2014年の発生件数は12年前の2倍以上に増加していることからも、高齢者の孤独死は増加傾向にあることがわかります。
この増加の背景には、「単身世帯数」の増加があると言われています。同団体の報告では、1995年には全体の5%だった、65歳以上の高齢者の単身世帯が、2015年には9.6%とほぼ倍増していることを発表しています。
さらに、2035年にはその割合は15.4%まで上昇し、実に「7世帯に1世帯が高齢者単身での世帯になる」と予想しています。
さらに以下のグラフは、同団体の発表を元に弊社が作成したグラフですが、東京都以外の地域でも賃貸住宅での孤独死件数は少なくありません。
※「孤独死の現状レポート」の内容をもとにBambooboy社が作成
賃貸物件における孤独死の件数は東京都を中心とした首都圏が全体の半数を締めていますが、逆に言うと残りの半分は他の地域でも発生していると言えます。
賃貸での孤独死発生から発見までの日数と原状回復費用の関係性
さらに、孤独死発生から、実際に発見されるまでの日数を見てみると、男女で大きな差があることがわかります。
※「孤独死の現状レポート」の内容をもとにBambooboy社が作成
なんと、死後1ヶ月以上経過してから発見される割合は男性が女性のほぼ6倍という驚くべき数値が発表されているのです。
この大きな差の原因は、男女の社交性の違いにあり、男性は近所付き合いなどをせず、部屋に閉じこもりがちな方が多いためと予想されています。
なお、気になる孤独死発生後の原状回復に必要な費用としてですが、同報告では平均で387,440円となっています。さらに残置物の処理費用が平均で212,920円かかるのです。
つまり、貸室で孤独死が発生した場合、清掃や遺品整理などで約60万円もの費用が必要となってしまいます。
このように入居者の孤独死発見までの日数が長くなればなるほど、当然ですが遺体の腐乱が進み、貸室へのダメージは大きくなり、その分原状回復に掛かる費用は高額となります。
この費用について、連帯保証人がいればその方に請求することができますが、孤独死の場合、借主の故意過失による損耗とは認められにくく、国交省のガイドラインから考えても全額を請求することは難しいでしょう。
また、これらの費用を相続人に請求することはできますが、相続を放棄されてしまえば、貸主の自費負担となる可能性が高いです。
孤独死してしまうような入居者である場合、そもそも相続人がいないというケースも考えれらます。
入居者が孤独死し、腐乱したことで、貸室に残った悪臭を理由に賃料を下げざるを得なくなった場合に損害を相続者に請求した事例がありますが、これらの費用請求が認められなかったという判例があります。
(東京地判昭和58年6月27日判タ508号136号)
孤独死の発生件数は、今後の高齢化社会の進行とともに、一層増加傾向に拍車が掛かることが予想されます。そして、その場合の貸室価値を損耗させる影響は小さくなく、オーナーさんにとっては悩みの種となりうる問題なのです。
そこで、アパートやマンションを管理している不動産会社としては、このような孤独死の発生を未然に防ぐ、または早期発見を可能とする「孤独死対応マニュアル」をしっかりと確立しておくことは不動産管理会社として非常に重要な対策となっていくことが予想できます。
増加する高齢者の孤独死に対して賃貸管理会社がとりうることができる対策とは?
前述の通り、単身で賃貸住宅に住んでいる高齢者の孤独死は今後確実に増加することが確実です。
そして、孤独死してしまった入居者の遺体の腐乱による物件の資産価値ダウンというケースが増加していくことが予想されます。
やはり、マンションやアパートの管理会社としては賃貸管理物件の資産価値を守るためにも、入居者の孤独死になんらかの対策を講じていくことが求められていきます。
簡単に行えて、効果的な方法として、管理物件を定期巡回し、孤独死のリスクがある入居者の方と定期的にコミュニケーションをとるなどの方法があります。
しかし、現実的に考えて平常業務をこなしながら、1件1件対応を行うというのはあまりに手間や労力がかかりすぎてしまいます。
そこで、孤独死の対策として、民間のサービスが登場してきています。
民間で行われているサービス
孤独死の発生件数の増加と共に、それに対応するサービスも登場し始めています。
孤独死対策のサービスには、主に4つの系統です。
- センサーによる異常感知←異常の発生を検知し、早期発見につなげる。
- 室内に通報機器を設置する←入居者自身が異常を感じた時点で通報できるので、孤独死自体を未然に防ぐ
- 定期的な訪問・電話相談←定期的に訪問することで、異常がないか確認する。また、コミュニケーションを取れる相手を作ることで入居者の精神衛生的な面でもサポートできる。
- ガス・水道の使用量の監視←インフラ環境の使用状況から異常の発生を検知し、早期発見につなげる。
以下、それぞれの4系統の代表的なサービスをいくつかご紹介します。もちろんこれ以外にもたくさんのサービスが存在します。
サービス名 | 運営会社 | サービスURL |
---|---|---|
HOME ALSOKみまもりサポート | ALSOK(綜合警備保障株式会社) | http://www.alsok.co.jp/person/mimamori/ |
みまもり安否確認通報サービス | 有限会社インターフェース | http://www.mimamori24.com |
みまも~る | 東京ガス株式会社 | http://home.tokyo-gas.co.jp/mima/index.html |
「つながりプラス」 | 株式会社こころみ | http://tsunagariplus.cocolomi.net |
いずれのサービスも月額1万円以下の料金で使用できて、センサー機能や定期訪問などを複合的に組み合わせて、孤独死の発生を防ぐ、発生しても早期発見により物件へのダメージを最小限化するという部分には効果的です。
しかし、貸室へのセンサー設置については初期設備の費用負担の問題は残ります。
結局のところ、外部サービスが優秀でもそのアパートやマンションの管理会社側に受け入れる体制を準備できていないと上手く回らないのではないでしょうか?
大家さん・不動産オーナー向けの孤独死保険サービス
孤独死による不動産価値の減損に特化したタイプの保険も登場してきています。
以下で注目度の高い3つの保険サービスをご紹介しておきます。
「無縁社会のお守り」
「アイアル少額短期保険株式会社」が運営する、賃貸住宅オーナー向けの保険サービスです。
特徴としては、
- 孤独死発生後の空室期間賃料、及び値下げ期間賃料のを1事故に付き200万円まで保証。
- 室内清掃、消臭、遺品整理を含む現状回復作業の費用を1事故に付き100万円まで保証
- 早期発見時でも見舞金を定額5万円給付。
となっています。4戸以上の戸数がある物件が対象となっており、保険料は1室につき月額300円です。
今回紹介する3つの保険の中で、保険料が最も安く、しかも孤独死発生時の様々なケースを想定した保証があります。
賃貸住宅費用補償保険「Re-Room」
e-NET少額短期保険株式会社が運営するサービスです。
前述の「無縁社会のお守り」と同じく、事故発生時の空室賃料の保証と減損賃料の保証を200万円まで、現状回復作業の費用を1事故に付き100万円まで保証してくれるます。
このサービスの特徴は、被害が隣室に及んだ場合(異臭で隣人が退去した、隣室にも異臭が移った。)についても同様の保証をしてくれる点です。
なお、保険料は貸室の賃料によって、個別見積もりとなります。
ハウスガード
少額短期保険ハウスガード株式会社が運営するサービスです。
前述の「無縁社会のお守り」と同じく、事故発生時の空室賃料の保証と減損賃料の保証を200万円まで、現状回復作業の費用を1事故に付き100万円まで保証してくれるます。
このような保険サービスは今度より増加していくことが予想されており、高齢者の単身入居の場合には必須の制度となってくるかもしれません。
自治体のサービス
また、自治体によっては、孤独死防止のための対策に取り組んでいる場合もあります。
以下、厚生労働省のHPで紹介されている、全国の自治体の取り組み状況の一覧です。
自治体によっては、ガス・水道・電気事業者などのインフラ事業者と連携し、一人暮らしの高齢者の生活状況を監視したり、定期的な訪問を行ったりしています。民間サービスに比べて費用の負担が少なく行える点がメリットでしょう。
来たる人口の40%が高齢者の時代に向けて、早期対策が重要です。
ここまで、孤独死の現状と孤独死による賃貸マンションやアパートなどの不動産へのダメージを軽減するためのサービスを紹介してきました。
孤独死に対して様々なサービスが増加していることからも、賃貸住宅の孤独死対策の必要性は高まってきていることが感じられます。
貸管理会社としても、来たる高齢化社会に向けて不動産管理会社として「孤独死を発生させないために、どう対策していくか?」「もしも、孤独死が発生してしまった場合はどう対応するか?」といった点を考え始めていく必要があります。
「まだまだ先のことでしょ?」と思われる方も多いかもしれませんが、早期対策をとり、孤独死発生時の対応ノウハウをしっかりと社内に備蓄しておけば、オーナーから信頼を得るための大きな財産になります。
ぜひ、今回ご紹介した情報を参考に、あなたの会社でも入居者の孤独死の対応策について、検討してみてください。
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