「発生率NO.1」入居者間の騒音トラブル!貸主の責任はどこまで発生する?

騒音トラブルは入居者間のトラブルの中でも発生率が高く対応が難しいクレーム案件の一つです。騒音トラブルへの対応方法について紹介。

隣人の騒音トラブルがひどい
オーナーからの相談

「隣の住人が夜中のなのにガンガン音楽をかけて、こっちは寝れなくて困ってる!不動産管理会社さん、隣の人を何とかしてよ!」

この騒音の原因になっている人、注意して2,3日は静かになるんだけど、またすぐに騒音が復活するから本当に手に余っているんです。
できれば契約の解除をしたいと思っているんですが、そういうことも可能なのでしょうか?

賃貸管理をする上で、誰しも受けたことがある隣人の騒音に関するクレーム。

騒音トラブルは、入居者間のトラブルとしても最も発生しやすいトラブルの一つとして挙げられます。
そして、賃貸管理を行っている担当者さんであればご存じの通り、解決は非常に難しく、対応方法を誤れば「問題を更に難しくしてしまう」クレーム案件であるといえます。
そのため、不動産管理会社や大家さんにとって悩みの種となっているというケースを耳にすること多い案件です。

そんな騒音トラブルに対して、大家さんや賃貸管理会社はどのように対応していくことが重要なのでしょうか?
今回は「賃貸マンション・アパートにおける騒音トラブルへの対応方法」をご紹介します。

法的に問題となる騒音とはどのくらい?

まず、賃貸人(大家さん)には賃借人から賃料をもらう対価として「目的物を使用収益させる義務」があるため、入居者が平穏に通常の生活を営むことができる、良好な環境を提供しなければいけない責任を負っていると言えます。
※マンションやアパートを不動産会社に管理を委託している場合は、その管理会社がその責務を務める必要があります。

つまり、大家さんや管理会社には、管理物件内で騒音トラブルが発生している場合においては、その原因となっている住人に対して注意しなければいけない責任があります。
騒音トラブルが発生しているのを認識しながらも、何も対応することなく放置するような場合、騒音の被害者は賃貸人に引越しの費用を求めたり、損害賠償の請求を行うことも可能なのです。

しかしながら、共同生活が前提となっているマンションやアパートのような建物においては、隣室間の生活音などの些細な音までを互いに完全に遮断することは現実的に不可能であることが、頭を悩ませる部分です。

そのため、隣室の住人が出す生活騒音が、社会生活上、通常受忍すべき限度を超える場合にはじめて「居住に適していない状態」が生じているとなります。
こういった場合おいてには、大家さんや不動産管理会社は「騒音を出す」という迷惑行為をやめさせる義務が生じることになります。

では、社会生活上受忍すべき限度とは、どの範囲のことをいうのでしょうか。

この点に関しては、都道府県や市が定める近隣騒音に関する環境基準(40〜60デシベル)が一つの基準になります。

さらに、騒音の程度、時間帯、内容、居住・周辺環境、近隣同士の交渉の有無、などの様々な事情を総合的に考慮して、受忍限度を超えた騒音か否かを個別的に判断していく必要があります。
※一概に「〇〇デシベル以上の騒音が出ているからNG」と言えない部分もあります。

受忍限度の範囲を超えている場合、賃貸借契約を解除できる?

何度注意しても迷惑行為を続ける入居者は、なんとかして追い出したいというのが管理会社の本音ではないでしょうか?また、このように注意や警告をしても受忍限度を超える騒音を出し続ける住人に対して賃貸借契約の解除を求めることは可能でしょうか?

多くの賃貸借契約書において、禁止事項として「賃借人は騒音などにより近隣へ迷惑をかけないように使用する」や「大音量でテレビ、ステレオなどの操作を行うことを禁止する」旨の項目があり、また、このような契約条項がない場合でも、近隣への迷惑行為をしないようにするという義務も「用法遵守義務」に含まれると考えられます。

したがって、この用法遵守義務違反を理由に「賃貸借契約を解除することは可能」であると考えられます。

しかし、迷惑行為をしているからといって、必ずしも賃貸借契約を解除できるわけではない

ただし、賃貸借契約の難しい部分で、契約違反があったとしても「信頼関係を破壊したと認めるに足りない特段の事情」がある場合には、賃貸借契約を解除することはできません。
そのため、いかなる場合であれば信頼関係が破壊されたといえるかが問題となります。

過去の裁判例では、マンションの賃借人が、隣室からの騒音が日常生活上通常発生する程度の騒音として受忍すべきものであったにも関わらず、隣の部屋の壁をたたいたり大声で怒鳴ったりするなどの隣人に対する嫌がらせ行為を続けたため、近隣の居住者が引越しをするという例がありました。

このケースでは、近隣の住民が退去せざるを得なくなるほどの嫌がらせ行為があったことが重視され、「信頼関係が破壊された」と判断されたようです。

つまり、迷惑行為の程度や事前に賃貸人からの注意があったにも関わらずこれを全く聞き入れなかったという事情の有無等を考慮して、「信頼関係が破壊された」と判断されれば賃貸借契約を解除できるでしょう。

他の対応方法としては、騒音が発生した段階で入居者から警察に対して騒音被害にあっているという旨の110番を行ってもらいます。マンションの管理会社から110番をしても対応してもらえませんが、実際に入居している人から110番を行えば、警察は出動してくれます。

そうして、不動産会社からの注意とともに、警察から何度も迷惑行為によって注意されているのにもかかわらず、入居態度を改めない場合は「信頼関係が破壊された」として契約の解除を請求することも可能となります。

※対象の入居者を追い出したいからといって、むやみに警察に110番を行うことは控えるべきです。
※信頼関係の破壊されたとされるには、様々な要素が絡み合っているので、警察に事情聴取されたとしても契約を解除することができない場合もあります。

受忍限度の範囲を超えていない場合はどう対応すればいい?

これに対して、騒音元の居住者の出す音が社会生活上受忍すべき限度を超えていない場合、どのように対応すべきでしょうか。「騒音被害」というほどではないけれども、隣や上階の音が気になるというクレームですね。

受忍限度の範囲を超えていない騒音であれば、賃貸借契約に特別な定めがある場合を除いては、騒音を防止しないからといって、賃貸人側に責任があるとはいえません。
とは言っても、受忍限度の範囲内であっても実際に生活している当事者の間では我慢ならないというケースも少なくありません。

些細な騒音でも、トラブルが長期化したり、それが原因で賃借人が退去したり、新しい賃借人の募集が困難になるなどの大きな問題に発展する可能性もあります。

そのため、賃借人から騒音の相談を受けた場合は、次のようなステップをとって対応するのが良いでしょう。

  • 建物内の掲示板への掲載や、ポストへの投函で騒音被害が出ていることを周知する。
  • 当事者以外の近隣の居住者に対しても積極的にヒアリングを行い、生活に支障が生じる騒音であるか、どちらか一方が過敏になりすぎていないかを判断する。
  • 調査した結果を(具体的な音の大きさ)などを持ち合わせた上で、管理会社や大家さんを含めて、直接話し合いの場を設ける。

往々にして、騒音問題は騒音被害を訴える側も、騒音の元と言われている側も、互いに被害者意識を持ってしまっていることが多いケースもあります。こういった場合こそ管理会社や大家さんは冷静に第三者的目線を持って、解決に導いてあげることが必要になってきます。

また、こういったトラブルを未然に防ぐ方法として、目安箱のような制度を導入し、事前に騒音被害の有無を把握すること、日頃から積極的に住人の方と接するように心がけて、顔見知りになる様に務めること効果的であるといえるでしょう。

まとめ

ここでは、賃貸マンションやアパートなどの共同住宅で発生率第1位の騒音トラブルについての「貸主(管理会社)の責任」と、トラブルへの対応方法について解説していきました。

騒音トラブルにおいて対応が難しい点として、「社会生活上受忍すべき限度」と「個人的に受忍できる限度」が違うためです。
ある人にとっては普通に生活しているだけでも、他の人にとってはその生活音が騒音であると感じてしまうこともあります。そのため、ただ一人の意見を鵜呑みにするのではなく、前後の入居者からもヒアリングを行い、客観的事実をもとに騒音トラブルに対して対応をしなければなりません。

実際の迷惑行為が発生している現場にいない不動産管理会社としては、対応方法が難しい部分はありますが、基本スタンスとしては誠実に対応しながら、事実はどうなのかをしっかりと見極めることが大切なポイントです。

併せて、騒音トラブルが発生してから対応するだけでなく、契約締結時や入居時などに「共同住宅であるため、生活音は必ず発生します。みなさんがそれぞれマナーを守りながら、お互いに快適に暮らせるようにご協力お願いします」と行う習慣をつけておくことが必要です。

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