「20年後には住戸の30%が空き家に!?」
空き家特措法の施行など、空き家問題について顕在化し始めている中で株式会社野村総合研究所(NRI)が今後の日本における空き家数や空き家率の予測が発表されていました。そこには、今から約20年後の平成45年(2033年)には空き家率が30.2%まで上昇し空き家数も2150万戸に達する可能性があると記載されています。
今日は、空き家問題にも密接に関連する「人口動態と賃貸管理の今後」について考えてみたいと思います。
人口減少や空き家の増加は賃貸管理にどんな影響を与えるのか?
国立社会保障・人口問題研究所が公表している「日本の世帯数の将来推計(全国推計)」(平成25年1月推計)によると、一般世帯の総数は平成31年(2019年)までは増加を続け、5,306万5千世帯でピークを迎えるが、その後は減少に転じ、平成37年(2025年)には5,243万9千世帯に、平成47年(2035年)には4,955万5千世帯にまで減少すると見込まれている。これを受けて、NRIでは「空き家率の上昇を抑えるためには、世帯数の減少に応じて、総住宅数も減らしていく必要がある」と指摘している。
住宅数について見てみると、国土交通省の「建築着工統計調査報告」(平成26年度分)によると平成26年度の新設住宅着工戸数は 88万470戸(前年度比10.8%減)で、5年ぶりの減少となった。NRIの予測では、「平成42年度(2030年度)までに新設住宅着工戸数が53万戸に減少する」と見込んでいるが、「新設住宅着工戸数が減少しても、それを上回るスピードで世帯数の減少が見込まれる」とも指摘。
平成25年(2013年)の総住宅数は6,062万9千戸、空き家数は819万6千戸、空き家率は13.5%だったが、既存住宅の除却や、住宅用途以外への有効活用が進まなければ、平成45年(2033年)には総住宅数7,106万7千戸、空き家数2,146万6千戸、空き家率30.2%に上昇する(図)とNRIでは予測している。引用先URL:住宅の除却等が進まない場合、平成45年の空き家率は30.2%、空き家数は約2,150万戸に | 不動産ジャパン
NRIの予測結果はこのままのペースで行けばという前提なので、空き家の有効活用や除去、人口動態の変化(出生率の上昇や移民の増加など)があればまた違った結果になるものの、不動産・賃貸業界からすると大きなターニングポイントが近づいてきていると言っても過言ではない。
現在の収益物件や投資用アパート・マンションの収益のほとんどは「家賃収入」であり、この家賃収入を左右する指標が物件の入居率(稼働率)である。「満室想定利回り」とあるよう収支やキャッシュフローはある程度の稼働率で算出している場合が多い(90%稼働前後か?)。しかし、単純にこのNRIの予測結果を当てはめるとすると一般的な物件の平均稼働率は70%前後ということになり、90%稼働想定で物件を購入した場合などは一気にその収支やキャッシュフローが悪化する。
空室率が高いということは、供給過多の状況であり、借り手市場のマーケットとなることが予測される。そうなった場合、競争原理が正常に働いているエリアであれば賃料はどんどん下がっていき、満室想定時の総収入についても落ち込むことになる。
※不動産管理会社同士が手を結んで、最低賃料などを決めてしまった場合は募集賃料の下落に歯止めをかけることができるかもしれないが、そのエリアによっぽどの需要がなければ、入居者は他のエリアに移ってしまい逆効果となる場合もある。また、そもそもそんな協定は違法である可能性もある。
いずれにしても、入居率の低下、もしくは、賃料の低下によって物件の総収入は現状よりも下がってしまうのは厳然なる事実として立ちはだかるだろう。そうなった場合に、大家さんが取りうる行動は「コストの削減」である。そして、賃貸経営においてランニングかかる費用で真っ先に削減対象となるのが「PM費用(管理業務委託費用)」や「BM費用(建物管理委託費用)」だろう。
これまで5%の管理委託料だったけど3%に減らしてほしい。BM費用をもっと圧縮してほしい。などなど賃貸管理会社への風当たりは確実に強くなってくることが予想される。そんな時に賃貸管理会社に求められることは、「費用に見合った実績を残していること」か「費用を減らした場合でも問題ないようなビジネスモデルを構築している」ことである。
管理業務委託契約の多くが「収受した賃料のX%」といった形であるため、総賃料のダウンは賃貸管理会社の売上減に繋がる。
※更新料収入や新規成約手数料なども大事な収入源ではあるが、人口減の社会では大きくは望めなくなる可能性がある。
そのため、これからの賃貸管理については「高付加価値で成果をあげることができる」タイプと「格安で最低限のサービスを提供」するタイプに分かれていくことも予測される。いずれにしても、人口動態と賃貸・不動産業界とは密接な関係にあるため、これからの外部要因の変化を注視しながら、価値あるサービスを提供できるように不動産会社自身が変化していくことが求められていくことが求められてくると予想されるだろうと考えています。
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