退去立会いをした際に、貸室の状態を見たところ、明らかにペットを飼っていた様子だったんです。
それで、入居者さんに聞いてみたところ、やっぱりペットを1匹飼っていたとのことだったんです。
ペット飼育禁止と契約書にもあるのに、こっそりペットを飼っていたんだから、クロスの張り替えなどの原状回復にかかる費用を借主さんに請求しても大丈夫ですよね?
複数戸数の物件の賃貸管理を行っていると、時々、ペット飼育不可としているのに入居者がこっそりペットを飼育していて壁やフローリングが爪跡でボロボロになっていたり、獣臭などが残っていたりして退去時に部屋を見たらびっくりしたというケースに遭遇することもあると思います。
今日は、入居者がこっそりペットを飼っていた場合など、賃貸管理物件におけるペット飼育時の原状回復の費用負担について説明していきたいと思います。
原状回復ガイドラインの基本的な部分について
まず、原状回復の費用負担については国土交通省が公表している「原状回復ガイドライン」が基本的なルールとなっています。原状回復ガイドラインについては過去にこのブログでも取り上げていますが、重要な部分にもなりますので今一度おさらいをしてみましょう。
原状回復ガイドラインの基本的な費用負担に関する考え方としては、
- 通常の利用による損耗や経年劣化は貸主の負担
- 故意・過失などによる破損や劣化は借主の負担
とされています。
従って、原状回復の費用負担を決めるためには貸室の損耗がどのような原因で損耗・劣化したのかを分別しなければなりません。
ペットを飼育していた場合の原状回復の費用負担区分について
では、ペットを飼育していた場合についてガイドラインにはどのように表記されているのかを見ていきましょう。原状回復をめぐるトラブルとガイドライン(再改訂版)の25ページ目に賃貸人・賃借人の修繕分担表のにペット飼育に関する旨も記載されていますので、引用します。
賃借人の負担となるもの
1.飼育ペットによる柱等のキズ・臭い
(ペットによる柱、クロス等にキズが付いたり、臭いが付着している場合)
また、53ページにペット飼育に起因するクリーニング費用を賃借人負担とする特約が有効とされた事例【東京簡易裁判所判決平14.9.27】の判例における争点となった部位と賃借人負担となった部分についての記載がありますので、参考にしてみてください。
つまり、ガイドライン上では、ペットの飼育による壁や床の劣化やペットの尿の後始末などが不十分で、臭いが付着した場合の現状回復の費用負担は賃借人の負担であると言えます。もちろん、貸主や賃貸管理会社に無断でペットを飼育していた場合も同様となります。
注意が必要な部分としては、壁や床などを「新品にする費用を全て賃借人の負担にすることができる」という意味合いではないことについてご注意ください。経年変化や通常損耗における部分やグレードアップする部分については貸主の負担であったり、すでに賃料に含まれる部分として解釈される場合があります。
原状回復をめぐるトラブルとガイドライン(再改訂版) 国土交通省より抜粋
不動産管理を行っていく上で、トラブルとなりやすいのがこの原状回復の費用負担となりますので特殊な案件については、専門家に相談するなどをして対応に当たるのがよろしいかと思います。
まとめ
ここでは、「貸主に無断でペットを飼育していた場合の原状回復の費用負担区分」について解説していきました。
まず、ペットを飼育していた場合の原状回復費用やルームクリーニング費用を賃借人負担とすることは可能です。
これは、貸主の了解を取って飼育していた場合でも、無断でペットを飼育していた場合でも変わりません。
※賃貸管理会社が注意しなければならない点としては、特約や契約項目に「借主は、貸室でペットを飼育している場合、クロスの張り替えやルームクリーニング費用を負担する」という項目を盛り込んでおくことです。
ペットを飼育している場合、どうしてもクロスや建具に臭いが染み付いてしまうため、通常よりも原状回復費用は高額になるケースが多いです。そのため、契約条項に原状回復費用について記載するとともに、借主に対して、契約時に通常の原状回復費用よりも高額になる旨の説明が必要です。
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