入居者さんが退去する際に、自分で取り付けたエアコンをそっちで買い取ってくれないか?と相談されたんだけど、どうしたらいいのかな?
今回はエアコンだから、買い取ってあげてもいいかなと思うけど、他の不要なものも買い取ってくれと言われたら困るんだけど、こういう時はどういう風に対応するものですか?
「エアコン1台だと、不便なんでもう1台取り付けたんですけど、次の家では不要なので買い取ってくれませんか?」
契約解約時や退去立会いの際などにこんな質問を入居者の方から受けた経験はありませんか?
貸室の賃貸借契約が終了する際、入居者さんと大家さんとの間で、入居者さんが取り付けた「造作」(ぞうさく)を買い取らなければならないのかでトラブルになるケースがしばしばあります。
よくあるのが、「入居後に新しく賃借人が取り付けたエアコン」や「飲食店用にで借りた建物に新たに取り付けた換気口」などの設備が「造作」に当たります。
入居者とすれば、貸室を明渡す際に、造作を取り外す費用を負いたくないですから大家さんが買い取ってくれるなら好都合です。しかし、大家さんからすれば、代金を払ってまでは要らないと考えることもあるでしょう。
今回は「賃貸借契約終了に際して、その造作を大家さんは買い取らなければならないか」を判断する基準を紹介します。
ここでの造作とは?
賃借人が貸室に新たに取り付けた設備(今回のケースではエアコン)を「造作」と呼びます。
造作の定義は「建物に付加されたもので、借家人の所有に属し、建物の使用に客観的便益を与えるもの」を指します。簡単に言うと「快適に利用するために新しく設置した入居者の所有物」が造作です。
大家さんがこの造作を買い取る義務があるかどうかの判断において重要なポイントは、そのエアコンを入居者が建物に取り付けることについて、同意をしたか否かが基準となります。(同意は取り付けの前後を問いません。)
では、同意していないパターン(無断で取り付けている)と同意しているパターンについて見ていきましょう。
エアコンを無断で取り付けしていた場合
まず基本知識として、賃借人の賃貸人(大家さん)への造作買取に関して「造作買取請求権」という法律が「借地借家法第33条」にて定められています。
造作買取請求権
建物の賃貸人の同意を得て建物に付加した畳、建具その他の造作がある場合には、建物の賃借人は、建物の賃貸借が期間の満了又は解約の申入れによっ て終了するときに、建物の賃貸人に対し、その造作を時価で買い取るべきことを請求することができる。建物の賃貸人から買い受けた造作についても、同様とする。
引用元:借地借家法第33条
借地借家法内の条文でも、造作の買取請求が有効であるのは「建物の賃貸人の同意を得ていることを条件」としています。
つまり、大家さんは、入居者が大家さんに無断でエアコンを取り付けた場合には、大家さんには造作を買い取る義務はありません。むしろ、入居者に対し、その造作を建物から取り外して元に戻すよう原状回復を請求することができます。
エアコンを同意を得て取り付けしていた場合
では、逆に「同意を得て」から造作の取り付けをした場合、大家さんは必ずその造作の買取をしなくてはならないのでしょうか?
実はそんなことはありません。上記の借地借家法33条は強行規定ではないので、造作を買い取らない旨を契約条文内に記載しておくことで造作買取義務を排除することが可能です。
賃貸借契約書に以下の条文を盛り込むことで造作買取を回避することができます。
例)
「賃借人が賃貸人の同意を得て造作を取り付けたとしても、賃借人は、造作を買い取るよう賃貸人に請求できない。」
「乙は甲に対して甲の同意を得て、付加又は買い受けた造作について買取の請求を行わないものとする。」
また、今回のケースのように、もともと付いているエアコン以外に追加で設備を加える場合、その故障時の修繕費用をどちらが負担するのかも特約によって定めても問題ありません。(特約がなければ通常通り賃貸人が修繕する義務を負います。)
よって、解約時にエアコンを買い取ってくださいと言われた場合の結論として、
- 造作買取請求権を排除する特約がない
- 造作の取り付けに同意している
この場合は、入居者は大家さんにエアコンを買い取るよう請求できます。
つまり、大家さんは入居者から退去時に造作買取請求を受けた場合についてはエアコンの代金を払わなければならないということになります。
もし、現在ご利用の契約書をチェックして「造作買取請求」について触れている項目がない場合は、別途、覚書や同意書を締結することで、買取請求を回避することもできます。
まとめ
このように、入居者さんが取り付けた造作を買い取るかどうかについては、契約で十分な取り決めをしているかが重要なポイントとなります。
現在の解釈としては、エアコンなどその造作を取り付けても不利益を受けないものであ れば、取り付け自体に同意しないことは許されないと考える解釈が主流となっています。
(造作を買い取りたくなければ、事前に契約事項や特約で賃借人の造作買取請求権を排除しておけばよいため)
賃貸借をする上で当然のことではありますが、後々トラブルとならないよう契約書で十分な取り決めをしておくことが大切とわかる一例ですね。
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