賃貸管理しているマンションの一室がゴミ屋敷に!入居者を退去させることは可能?

ここでは自社管理物件内でゴミ屋敷が発生した場合の対応や退去時の原状回復費用について解説しています。

ゴミ屋敷

賃貸マンションでのゴミ屋敷にお困りの不動産管理会社が増えています。

自社で管理しているマンションの入居者から、「〇〇号室からものすごい異臭がするし、廊下がゴミだらけ!なんとかしてください」とクレームの電話。
慌てて駆けつけると、貸室内はコンビニのゴミ袋が天井に届くまで積み上げられ、浴槽の水は腐り、食べかけの弁当に小バエが集り、フローリングまで腐食...まさに「ゴミ屋敷」状態だった。

アパートやマンションなどの集合住宅を管理している賃貸管理会社としては、考えただけで恐ろしくなるようなシチュエーションですよね。

平成21年に国交省により発表されている「空き地・空き家等外部不経済対策について」のレポートによると、全国のゴミ屋敷の存在について、250の市町村が「ゴミ屋敷が発生している」と回答しています。
出典先URL:国土交通省「空き地・空き家等外部不経済対策について」

ゴミ屋敷の発生状況に関する調査

※「空き地・空き家等外部不経済対策について」の内容をもとにBambooboy社が作成

この資料については外観で「ゴミ屋敷」と判断ができる一戸建についてのアンケート調査の結果なので、外部と隔離された賃貸マンションやアパートでの現実としては、その数千倍の数の「ゴミ貸室」が存在しているともいわれています。このように、賃貸管理事業者にとって「ゴミ屋敷問題」はいつ自社の管理物件で発生しても不思議ではない現象なのです。

なぜ、賃貸マンションやアパートなどの集合住宅でのゴミ屋敷が発生してしまうのか?

では、そもそも、どうして貸室が「ゴミ屋敷」と化してしまうのでしょうか?
賃貸マンションやアパートなどの集合住宅でのゴミ屋敷は、一戸建ての入居者とは発生する原因が異なると言われています。

一般的に、一戸建ての家をゴミ屋敷としてしまう住人は、主に50歳以上の高齢者が多いと言われています。
リストラや離婚などの理由で、突然一戸建てに一人暮らしとなってしまった方(男性に多い)が精神的に追い込まれて、セルフネグレクト(自棄状態)になってしまうという事例が多くあります。
つまり、一種の精神的な病気が原因の一つとなっているケースがあるようです。

しかし、賃貸アパートやマンションなどの「集合住宅」で生活している方の場合は、一見するとゴミ屋敷に住んでいるようには見えないような身なりの綺麗な方でも、貸室をゴミ屋敷にしてしまっているという事例が多いのです。

こういった方がゴミ屋敷を生む原因は「食生活の変化」「生活時間帯の多様化」など社会的な要因が関係していると言われています。具体的には以下のような5点が挙げられます。

  • 夜間就労者や非正規雇用者の増加でゴミ出しの時間に部屋に不在。または寝ている
  • 外部から見えないワンルームマンションの増加
  • 近所付き合いがなく、隣人意識が欠如している
  • 単身世帯の増加
  • コンビニを始めとする中食産業の発達

つまり、家に持って帰って食べる食事が増え、ゴミの発生スピードが速いにも関わらず、集合住宅のゴミ捨てルールの時間にゴミを捨てることができない。こういった人が部屋の中にゴミを溜め込むようになってしまうということです。

こういった入居者は職歴や収入面に問題がなく、一見すると普通の人にみえるため、不動産管理会社は隣人からのクレーム通報が入るまで、貸室がゴミ屋敷化していることに気づかないという状況を生み出してしまっています。

マンションやアパートの賃貸管理会社は、ゴミ屋敷のゴミを勝手に処分して問題ないのか?

では、冒頭のような他の入居者からゴミ屋敷化した部屋についてのクレームがあった場合に、不動産管理会社やオーナーさんはそのゴミを勝手に捨ててしまっても問題ないのでしょうか?

マンションやアパートの住人に迷惑をかけているため、それを是正するのは不動産会社の仕事でありますが、貸室内はもちろん、共用部に放置されている場合でも、ゴミを勝手に捨ててしまうことは認められません。
※これは、物件を所有している大家さんも同様です。

ゴミのように見えても、入居者にはそれらの所有権があるため、勝手に処分してしまうことは「所有権の侵害」となってしまい、勝手にゴミを捨てるなどの行為はできないのです。
他の人からするとごみのように見えても、入居者からすると捨てたくないもの(ゴミではない)という場合もあるため、対応には注意が必要です。

また、相手に非がある行為(違法行為)をしていたとしても、それを自分も不法行為でやり返してしまうことは「自力救済」となり、民法で禁止されています。
やられたら、やり返してやるということはNGです。

権利者が、公権力の力を借りずに自らの実力で権利を実現すること。原則として違法行為であるが、盗まれた品物を犯人から奪い返すことなどは許される。自救行為。

引用元:自力救済(ジリョクキュウサイ)とは:コトバンク

ゴミ屋敷化してしまった場合に大家さんや不動産管理会社が行うこととしては、「内容証明郵便の送付」や「行政機関への相談」が挙げられます。

内容証明郵便で「〇〇日までにゴミを処分して下さい。期日までに対応がない場合は当該ゴミの処分、賃貸借契約の解除を行います。」と通達しましょう。
内容証明郵便を送付して期日までに対応していないからといって、即座にゴミを強制的に撤去することはできませんが入居者に注意勧告をしたという証拠になり、今後の対応をより合法的に進めることができるようになります。

もう一つが、「行政機関への相談」です。相談対象としては、警察・消防署・保健所・区役所などが挙げられます。
大家さんやマンションの管理会社だけでなく、行政機関を巻き込んで対応することがこういったケースでは有効であると言えます。

賃貸マンションでのゴミ屋敷を理由に、入居者を退去させることはできるのか?

ゴミ屋敷を理由に契約を解除する

では、いくら注意をしても入居状況に改善がない場合、「貸室をゴミ屋敷化している」を理由に入居者を退去させることはできるのでしょうか?
言うまでもなく、借りている部屋をゴミ屋敷にすることは「善管注意義務」に違反していると考えられるため、善管注意義務違反として退去(契約の解除)を求めることは可能でしょうか?

賃借人は賃貸人に対し、賃借物を明け渡すまで、善良な管理者の注意をもってその賃借物を保管しなければならない義務のこと。これを「善良なる管理者の注意義務」、略して「善管注意義務」という。

引用元:善管注意義務(ゼンカンチュウイギム)とは:コトバンク

こちらについては、結論からいうと「契約解除できないわけではありませんが、かなりの根気が必要」です。
過去の判例において、以下の通り貸室をゴミ屋敷にしてしまった場合、貸主は契約の解除が可能であるとされています。

「社会常識の範囲を遥かに越える著しく多量のゴミを放置する行為は賃貸借契約を解除する自由に構成するものと言わざるを得ない」

東京地裁 平成10年6月26日判例より引用

この裁判でポイントとなったのが、以下の2点でした。

  • 賃貸借契約の締結時に「賃借人は、貸室内において、危険、不潔、その他近隣の迷惑となるべき行為をしてはならない」という内容の特約を結んでいた。
  • 貸主は借主に対して、複数回に渡ってゴミを捨てるように求めていたが、借主は応じなかった。

判決内容にも「貸室内におけるゴミの放置状態が多少不潔であるからといって、直ちに賃貸借契約を解除することはできない」とあり、一般的に部屋を少々汚したくらいでは、仮に契約条項や特約に違反していたとしても貸主から一方的に契約を解除することはできません。

その上で、以下の3点を理由に貸主の明渡し請求を認めました。

  1. 2年間以上に渡って社会常識の遥かに越えるゴミを放置していた。
  2. 貸主が消防署から貸室内のゴミが原因で火災が発生する危険性があると注意を受けた。
  3. 衛生上の問題、また火災発生の危険性から、貸主はもちろん近隣の住民にも大きな迷惑を掛けている。

まとめると、ゴミ屋敷の入居者を退去させる場合には、以下のフローを辿る必要があります。

  • まず、口頭や文書で注意をする。改善がない場合は何度も注意する。
  • 改善がない場合、内容証明郵便を送り「期日を定めてゴミを処分すること」「それが出来ない場合は一定期間内に退去してもらう」と通達します。
  • 内容証明を送っても退去しない場合は、明け渡し訴訟。

過去の判例からも分かるように、退去(契約解除)は要件としては可能ですが、度重なる注意の実施や裁判手続きなど非常に時間と労力が掛かるというのが現実のようです。

もしも、ゴミ屋敷となってしまった場合に原状回復工事の金額と費用負担はどうなる?

ゴミ屋敷の場合の原状回復費用について

では、なんとか訴訟を行ってゴミ屋敷の入居者が退出(契約解除)したとしても、それで全ての問題が解決するわけではありません。
次の入居者の方を探す為にも、そのゴミ屋敷を人が住める状態に戻さなくてはなりません。

当然ですが、ゴミ屋敷の状態から原状回復するために必要な費用は通常よりも遥かに高額になります。場合によっては百万円を超える金額が必要な場合もあるでしょう。
ゴミ屋敷としてしまっている場合、明らかに「故意・過失」であるため、大家さんや不動産管理会社としては借主に全額請求を行いたいと思われるのではないでしょうか?
ここでは、原状回復ガイドラインの内容を踏まえて、借主にどれだけ請求することができるかを見ていきましょう。

以下の内容については、当社が国土交通省住宅局住宅総合整備課の方に確認を行った内容を記載しています。

ゴミ屋敷における原状回復の場合であっても国交省のガイドラインは適用されます。

国土交通省が発行している「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」では、原状回復について以下のように定めています。

原状回復を「賃借人の居住、使用により発生した建物価値の減少のうち、賃借人の故意・過失、善管注意義務違反、その他通常の使用を超えるような使用による損耗・毀損を復旧すること」と定義し、その費用は賃借人負担としました。そして、いわゆる経年変化、通常の使用による損耗等の修繕費用は、賃料に含まれるものとしました。

引用元:国土交通省のHP「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」

つまり、原状回復とは「借りた当初の状態に戻すという意味ではない」と定義しています。
これは、綺麗に貸室を使ったとしても、ゴミ屋敷としてしまった場合でも同じように経過年数(入居年数)や過失の範囲を考慮して原状回復費用を計算する必要があります。

また、同ガイドラインでは、設備の経過年数(減価償却)を考慮することを前提とした上で、以下のようにも記載しています。

経過年数を超えた設備等であっても、継続して賃貸住宅の設備等として使用可能な場合があり、このような場合に賃借人が故意・過失により設備等を破損し、使用不能としてしまった場合には、賃貸住宅の設備等として本来機能していた状態まで戻す、例えば、賃借人がクロスに故意に行った落書きを消すための費用(工事費や人件費等)などについては、賃借人の負担となることがある。

引用元:国土交通省のHP「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」

つまり、使用人に故意・過失があり、使用が不可能な場合には、その原状回復費用を借主に請求することができると認めています。
しかし、使用人に明らかな故意・過失がある場合でも、経年劣化による減価償却は考慮し、さらに使用人に帰責性がある範囲までしか原状回復費用を負担させることはできません。

例えばゴミ屋敷の場合、以下のような判断になります。

  • クロスに食べかすやたばこのヤニ付着して汚れてしまった→入居年数に応じて、減価償却した金額で、使用人が汚損した範囲のクロスの張替え費用は使用人が負担。
  • 風呂やシンクにカビが湧いてしまった場合→清掃を怠った、ゴミを放置していたなど、賃借人の善管注意義務が原因でカビが生えた範囲は使用人が負担。

結論としては、ゴミ屋敷の場合でも、経年劣化や過失の範囲を考慮しなくてはならないため、仮にクロスや建具、設備を全交換になっても、その原状回復費用の全額を賃借人請求することは難しいということです。
※ゴミ屋敷のような状態となった場合、ほとんどが借主の過失という状況かと思いますが、設備それぞれの耐用年数を考慮した金額となるため、入居年月が長い場合は、工事の施工費用のみというケースもあります。
※実際の原状回復費用の負担割合についてはケース・バイ・ケースで判断が異なるため、専門家に相談することをおすすめします。

賃貸物件におけるゴミ屋敷問題は、スピーディーに退去させることを最善としましょう。

ここまで、マンションやアパートといった賃貸住宅でゴミ屋敷が発生してしまったときの、「契約解除に向けての動き方」や「原状回復費用の考え方」について紹介していきました。

要約すると、以下の3点が重要です。

  • 貸室をゴミ屋敷をしてしまっていることを理由に退去(契約解除)させる場合は、「何度もゴミを処分するよう求めていること」「貸室を清潔に使う内容の特約を結ぶこと」が重要
  • 一度、ゴミ屋敷にしたからといって、即時退去させることは難しい
  • ゴミ屋敷の原状回復の場合も、国交省のガイドラインにもとづき、経年劣化や過失の範囲を考慮して費用を請求しなくてはならない

ゴミ屋敷の原状回復費用については、トラブルが多く借主が支払う資力がない場合などは、次の入居者を探すために、貸主が費用負担して原状回復工事を行う場合も多いようです。

貸主としては「どうして、ゴミ屋敷にされて自分が全額払うんだ!」と納得できない部分もあるかと思いますが、このようなゴミ屋敷を作る問題のある入居者に退去してもらえたことが、ある意味では悪くなかった結果と考えることもできるのではないでしょうか?

大切な物件の一室にゴミ屋敷を抱えて賃貸運営を行い続ければ、既存の入居者に不満を与えるとともに、新しい入居希望者は入りづらくなるわけです。
賃貸マンションやアパートにおけるゴミ屋敷問題に対して、不動産管理会社は適切な対応方法を行い、スピーディーに問題解決の方法をオーナーに提案できる能力が求められるのではないでしょうか?

この記事は「クラウド賃貸管理ソフトReDocS(リドックス)」が運営しています。
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