賃貸管理業務、不動産管理業務を行う上で、「契約者からのクレームを未然に防ぐこと」は欠かせない業務のひとつです。入居中に契約者とトラブルを引き起こしてしまうことで、日常業務以外の余計な業務が発生してしまうとともに、契約者の不満も蓄積してしまうこととなります。
契約者トラブルが増えてしまうことで、満足な賃貸管理サービスを提供することが難しくなり、それが原因となって「契約の解約」や「入居率の低下」、ひいては賃料収入が減少してしまうことでオーナーの収入も不安定なものとなってしまいかねません。
ここでは、入退去時に契約者とトラブルになりやすいケースの1つとして、「設備と残置物の取り扱い方法の違い」について取り上げ、マンションやアパートの管理会社やオーナーが不利益を被らないために、どのように対処すればよいかのポイントをまとめていきます。
"設備"と"残置物"は意味が異なるため、必ず契約時に説明が必要となります。
ここでは「残置物」とは何かについて、「設備」の意味や定義と比較しながら説明していきます。
まずは、大雑把な説明としては以下の通りとなります。
- 設備・・・マンションやアパートの付帯設備のことを指し、貸主が利用できるように契約者へ提供しているもの。
- 残置物・・・前入居者が残して(残置して)いった家具や家電など。
今回のケースにおける「残置物」については、「前入居者が退去時に予めオーナーに許可をもらって残した(残置した)家具や家電」という前提で解説していきます。
「残置物」は、前契約者が入居中に取り付けて残していったエアコンやガスコンロ、室内照明など様々なものが挙げられます。
一見、前契約者と貸主(オーナー)間で残置物の取り扱いについて話しがついていることで、対象の不動産の賃貸管理を今後も続ける上で特に問題はなさそうに思われますが、残置物がある貸室については、新しい契約者と契約する際には十分な注意が必要となってきます。
その理由については、以下の2点があげられます。
- 設備と残置物では、故障などが発生した場合の対応方法が異なる。
- 新しい契約者は部屋に付帯している残置物を見ただけでは、設備かそうでないかを判別することができない。
そこで、マンションやアパートの賃貸管理会社やオーナーは、新しい契約者が入居するときに「設備」と「残置物」それぞれの取り扱いについて説明することが重要になってきます。
それでは、不動産管理会社は「残置物」についてどのように説明すればよいのでしょうか?
まず、「残置物」については誰が「所有権」を持っているのかを明確にする必要があります。
上前入居者がオーナーに残置物を貸室に置いていくことについての許可をもらった時点で、残置物の所有権は前入居者からオーナーに移行しているとみなされます。
そのため、新しい契約者に対して対象の残置物について、「これが残置物であること」を明確に意思表示しなければ、新規契約者にとってはそれは残置物ではなく、部屋の「設備」であると認識され、故障や不具合があった際には所有者の責任(貸主の責任)によって対応しなければならないとみなされてしまいます。
そのため、残置物のある物件を契約する際には以下の内容を賃貸借契約書や重要事項説明書に明記することが求められます。
- 対象となる家具・家電は残置物であることを重要事項説明書・契約書に明記する。
- 貸主(オーナー)は残置物の動作や性能、効用について一切の責任を負わないことを明記する。
- 貸主(オーナー)は残置物が故障した・不具合を起こした場合、修理や交換、撤去の責任を負わないことを明記する。
- 対象となる家具・家電は残置物であるため、退去時には契約者(入居者)が移動または撤去し、貸室を原状回復の上、明け渡すことを明記する。
要するに、残置物については、貸主から借主へ無償で譲渡(あげる)するので、今後のメンテナンスや故障時の対応は借主が行い、引っ越しの際には所有物と一緒に処理して明け渡す必要があることを契約時にしっかりと書面・口頭で契約者へ説明することが大切です。
「残置物」は「入居後は借主の所有物だから、壊れたりしたら自分で修理しないといけない」と理解してもらうことが重要となります。
「家具プレゼントキャンペーン」でプレゼントした家具・家電の取扱いについては、賃貸借契約書の内容に準じる
今回は「設備」と「残置物」をテーマに話をすすめてきたので、賃貸マンションやアパートのHP募集図面やでよく見られる「家具プレゼントキャンペーン」ついても取り上げた見たいと思います。
家具プレゼントキャンペーンでプレゼントされた家具は、果たして設備なのか、それとも残置物なのか。その取り扱いについて解説していきます。
まず、結論から述べると、家具プレゼントキャンペーンでプレゼントした家具や家電についての取り扱いについて、絶対にこうしなければならないというルールはありません。
そのため、これまで解説してきた内容と同様に、プレゼントされた家具や家電についても、賃貸借契約書や重要事項説明書でどのように取り扱うかきちんと明記することが必要となってきます。
例えば、プレゼントを行う家具や家電を重要事項説明書などで「設備」と記載して契約を行えば、プレゼントした家具や家電の所有権はオーナーにあり、故障時対応についてはオーナー負担によって行われるべきであると言えます。
一方で、該当の家具や家電を「設備外」と記載し、且つ特約に「家具プレゼントキャンペーンによって譲渡する家具の所有権は契約者にあるため、貸主(不動産管理会社は)一切の責任負わない」と追加して契約を交わせば、オーナーはプレゼントした家具や家電を管理する必要がなくなると言える。また、プレゼントした家具については、所有者が契約者になるため、契約者は退去後の部屋に家具や家電を置いていくことができず、家具を新しい引っ越し先に持っていくか、撤去する必要が出てきます。
このように、プレゼントした家具や家電が故障した際にどうするかなどでそのプレゼントする家具や家電を設備とするか、譲渡するかを考えることが大切となります。
また、前述の通り、これらの内容を確実に賃貸借契約書や重要事項説明書に明記するとともに、契約時に必ず口頭で説明し契約者に理解してもらった上で契約を締結する必要があります。
まとめ
今回は、設備と残置物の違いというテーマで契約者からのクレームを回避するポイントについて解説していきました。
設備と残置物では故障時の対応や退去時の取扱いについて明確に異なっているため、契約者には契約時に書面と口頭でしっかりと説明し理解してもらって入居してもらうことで、不要なトラブルを減らすことにつながってきます。
「重要事項説明書などで設備として明記していないから、それは残置物の取り扱いのはずだった」といったようなことでトラブルを回避するためにも、何が設備で何が残置物なのかを明確にすることが契約書類作成時に重要なポイントであると言えます。
※実際の運用と本記事の内容が異なる場合は、弁護士の方などと相談の上、対応されますことを記載致します。
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