
最近よく耳にする「不動産テック」という言葉。
不動産テックは不動産業界や賃貸管理業務にどんな変化をもたらすのでしょうか。その概要と効能について解説していきます。
【1】不動産テックとは
最近よく目にする「不動産テック」という言葉。
近年では「不動産テックEXPO」というイベントが開催されたりと、不動産業界では何かと話題のワードです。
なんとなく、「テックとはテクノロジー(技術)のことだろうから、不動産の仕事に関する何らかのシステムのことだろうか……」というふわっとした認識はあれど、結局「不動産テック」の正体が何なのか具体的にわからないという方もいるのではないでしょうか。
そこで、まずはこの「不動産テック」という言葉から解説していきます。
不動産テックを推進する一般社団法人不動産テック協会によれば、「不動産テック」は「不動産」と「テクノロジー」を組み合わせた言葉です。
この意味するところは、「IT技術を用いて不動産に関わる課題や従来の商習慣を変えようとする価値や仕組みのこと」です。
でも、パソコンを使っていれば「不動産テック」と呼べるのかといえば、そうではありません。
不動産テックには、主に4つの目的があります。
1.労働生産性の低下を防ぐ
今後、我が国においてさらに少子高齢化が進めば、労働者の数もどんどん減っていきます。
すると不動産業界においても、現在の仕事の進め方を続けた場合会社の運営が難しくなり、労働生産性が著しく低下するということもあり得ます。
そこで、社員ないしスタッフが減ったぶんを補えるように、IT技術を用いて業務を効率化・自動化するような仕組みを作る必要があるのです。
2.情報を透明化する
現在、ホームズやスーモ等の不動産サイトでは全国の物件情報を簡単に探すことが可能ですが、一般の入居希望者が得られる情報は限られています。
これに対し不動産会社はレインズ等を通して一般の方が入手できない情報を持っており、以下のような問題も発生しています。
- 好みの物件を見つけて問い合わせをしたが、すでに契約済だった
- 好みの物件を見つけて問い合わせをしたが、じつは「おとり広告」で、別の物件を薦められた
こういった入居希望者の不利益を回避するためにも、もっと情報を透明化する仕組みが必要と言われています。
3.新しいビジネス、サービスを生み出す
不動産業界においてこれまでできなかったこと、業界が現在抱えている問題領域において、IT技術を使用して新しいサービス、価値を生み出すのも目的の1つです。
例えば、人脈や伝手に依存していた不動産会社同士をウェブサイト上でマッチングさせるシステムや、物件現地に赴く必要がある内見を自宅にいながら実施できるVR内見といったものが挙げられます。
【2】不動産テックの例
では、実際、不動産テックにはどういったものがあるのでしょうか。
不動産テックは、以下のカオスマップという図表でカテゴリー分けされています。

出典:一般社団法人不動産テック協会『不動産テック カオスマップ』
早速具体例を見ていきましょう。
1.ローン・保証
不動産テックにおけるローン・保証の領域は主に住宅ローン関係があります。
例えば、以下のようなサービスがあります。
全国120の銀行のローンを比較し、住宅ローンの借り換えメリットを教えてくれるアプリ。
チャットで借り換えの相談も可能。株式会社MFSが開発。
電話やwebにて無料で住宅ローンについて相談できるサービス。
住宅ローンの窓口株式会社が運営。
「様々な情報に簡単にアクセスして、自分に適したものを選べる」というのは、まさに情報の透明性を推進する不動産テックだと言えます。
2.クラウドファンディング
クラウドファンディングは、インターネット上で出資・投資・寄付をする仕組みです。
不動産テックとしては、個人の投資家でも投資プログラムに参加できる仕組みが提供されています。
賃貸物件等に1口1万円から投資することができるサービス。
収益に基づいて配当金の分配を受けられる。
空き家と、空き家を有効活用したい人、投資家を繋ぐサービス。
長い間使われなかった山小屋なども、上記のサービスのおかげでリノベーションが可能になり、利益を生むことができます。
これらは新しいビジネスやサービスを生み出す「不動産テック」であると言えます。
3.仲介業務支援
仲介業務支援の不動産テックは、以下のようなものがあります。
全国の不動産業に関わる営業担当者をマッチングさせるアプリ。
買い手と売り手は、自身のニーズにふさわしい物件、買い手に出会うことができる。
株式会社トリビュートが提供。
売主にとってお得な情報をメールで自動送信したり、買主を売主に自動で紹介する仕組みを備えたアプリ。株式会社Housmartが提供。
これらは、営業にかかる工数を削減し、営業活動を効率化することを目的とした「労働生産性を向上させる不動産テック」です。
4.IoT
IoTとは、「Internet of Things」の略語です。「Things」は「モノ」という意味ですので、IoTは直訳すると「モノのインターネット」と言います。
この「モノ」というのは例えばスマホ・家電・カメラ・スピーカーなどインターネットに繋げられる機器等を指します。
つまり、インターネットを通してデジタル機器を操作したり、その機器の状態を把握する仕組みがIoTです。
スマートフォンで自宅の鍵を開け閉めできるサービスです。
スマートフォンを直接操作せず、カバンに入れたままにしておいてもドアに近づくだけで解錠することができます。
Qrio株式会社が提供。
住宅のエアコン・給湯機器・電子ロック・分電盤等と連携して、家から離れた場所でもスマートフォン等で室温・湿度・戸締りの有無・電気ガス水道の使用量を確認できるサービス。
家に一人でいる子どもや高齢者の安否を把握できる。
ミサワホーム株式会社が提供。
5.スペースシェアリング
シェアオフィスを探したいユーザーと入居者を探したい物件管理会社をマッチングさせる仲介サービス等がこれに該当します。
希望する条件で絞り込んでオフィスを検索・比較できるサービス。
フリーランスや副業者、テレワーカー向きの作業スペースも紹介している。
株式会社ユースラッシュが運営。
貸し会議室やレンタルスペースを使用したいとき、日付・滞在時間・使用開始時間・場所で検索できるサービス。
広さや電源の数、Wi-Fiの有無などを確認し、気に入ればそのまま予約可能。
株式会社スペイシーが運営。
4,5 は共に新しいビジネスを生み出すための不動産テックということができます。
【3】賃貸管理業務に役立つ不動産テック
不動産テックは、「賃貸管理業務」の領域でも大いに役立ちます。
管理業務で不動産テックを利用するメリットとは何なのでしょうか。
1.情報の一元管理・運用
賃貸管理業務の現場では、作業に必要なあらゆる情報が別媒体で管理されているケースが多いのではないでしょうか。
例えば、家賃の入金登録をする際には「入金明細が記帳された銀行通帳」と「入金結果の記録・管理をおこなうエクセルファイル」を使用している場合、2つの媒体を使用して情報を管理・運用していることになります。
他にも、クリアファイルで管理している紙の契約書を確認しながら更新時の契約書を作成したり、オーナーに送金する際に帳簿やエクセルで管理している原状回復費用・広告費の情報を集めたりするなど、情報の管理場所を統一していないことは多いのではないでしょうか。
家賃の入金消込や契約書の作成、オーナー向けの送金業務のたびに様々な場所・媒体で管理している情報をかき集める事務作業のやり方は、作業量が多くなれば必ず確認漏れ・記録漏れなどのケアレスミスを発生させます。
こういった「管理している情報がバラバラ」という問題を解決するのが管理業務支援型の不動産テックです。
賃貸管理の事務作業に必要な情報をまとめて一括管理する不動産テックは、一般的に「賃貸管理ソフト」「不動産管理システム」と呼ばれます。
賃貸管理ソフトでは、契約者の情報(契約開始月、契約形態、家賃・敷金・共益費など)を一元管理し、その情報をもとに、システム上で書類を作成したり、精算することができます。
まさに、「単一の媒体で事務作業をおこなう」理想の仕組みと言えます。
2.情報の属人化を防ぐ
賃貸管理の現場でありがちなのが、スタッフそれぞれが抱えているタスクや処理中の問題すべてを把握している人がいないという問題です。
スタッフ1人につき数百戸もの管理物件を担当している場合には、言うまでもなく、他のスタッフが扱っている仕事の内容を気にする暇などありません。
しかし、この状態を続けていると、スタッフのAさんが不在のとき、Aさんが抱えている業務を引き継ぐことが難しくなります。
なぜなら、Aさんが抱えている業務の進捗状況はAさんしか知らないからです。
さらに、日々の業務のなかで発生してしまった失敗に関する教訓が職場全体で共有されなければ、Aさんが発生させたミスをBさんも発生させてしまうという問題が起こり得ます。
この問題に関して、賃貸管理ソフトは有効な仕組みを持っています。
クラウド型の賃貸管理ソフトを使用すれば、Web上で稼働するシステムに複数人で同時にログインして事務作業をおこなうことができます。
そして、賃貸管理ソフトではスタッフそれぞれが対応したクレーム、タスク、事業所が抱えるすべての管理物件・契約者情報がまとめて管理されているため、各スタッフはいつでも「今現場で進行している業務」を把握することができます。
これにより、業務引継ぎ問題を解決できるだけでなく、業務上の失敗や効率的な仕事の進め方に関する知識が現場全体に共有されます。
3.テクノロジーにより、作業時間を短縮する
賃貸管理ソフトの大きな利点の1つに、「業務時間短縮に大きく貢献する」というものがあります。
今まで紙やエクセルによって進めていた業務プロセスを短縮できるというのは、まさにテクノロジーの恩恵です。
作業時間を短縮できる仕組みには、以下のようなものがあります。
●契約書類等を作成する速度向上する
賃貸管理ソフトの強みは、「契約者情報や金銭の情報を登録する」仕組みと「システム内の情報を使用して書類作成する」仕組みの組み合わせにあります。
書類作成時、予め登録された情報をもとに自動で書類に記載するべき内容を反映してくれるため、いちいち必要事項をキーボードで手打ちする作業が消滅します。
●家賃の入金消込の速度を向上
通常、家賃の入金消込といえば、入金明細を目視で確認しながら過不足がないかチェックして、帳簿やエクセル等に記録しなければなりません。
しかし、賃貸管理ソフトではその作業そのものを大幅に短縮化することが可能です。
例えば弊社の賃貸管理ソフト「リドックス」では、ネットバンキングの明細に記載された契約者の名義とリドックスに記録されている契約者の名義をマッチングさせて瞬時に入金消込を実施、消込結果を記録できます。人間ではなくシステムがこのマッチング作業をおこなうため、入金消込にかかる時間は従来の10倍以上も向上します。
●オーナーに送る金額の精算、送金にかかる時間を削減
オーナーに送る金額を送金する際には、様々な媒体で管理している費用を合わせて精算する必要があります。しかし、各媒体に記録されている数字を転記するとなれば、ミスが発生してしまう可能性があります。
賃貸管理ソフトは、この問題に関しても大きな変革をもたらします。システムに登録した様々な費用をすべて反映し、自動で計算してくれるため、作業量が多くなるほど発生していたミスも消滅します。
4.採用コスト、新人教育コストを削減
管理戸数が増えて業務が膨大になると、新人スタッフを採用して戦力を増強しなければならない場面がやってきます。けれど、採用にも無論コストがかかります。
実は、弊社のリドックスのような低価格の賃貸管理ソフトを導入することで、採用より安いコストで、現場で増えた業務をカバーできます。それほど、システムの導入は業務時間を大幅に短縮化するのです。
また、管理業務は業務の多種多様さゆえに新人スタッフを教育するのにも時間を要します。
教育に時間がかかるのは、たいていの場合業務プロセスが複雑化しているからではないでしょうか。
最初から賃貸管理ソフトをベースに管理業務を実施している場合には、新人スタッフも早く業務に慣れることができます。理由は簡単で、新人でもすぐ扱えるような簡単な操作性を実現しているからです。
弊社のリドックスは、この点がとても好評です。
【4】まとめ
今回紹介した不動産テックは、もはや新しいワードではなく、不動産業界の常識となりつつあります。
最初に述べたように不動産テックの種類は主に3点ありますが、とくに管理業務においては業務を大幅に効率化し労働生産性をアップさせることができます。これを可能にしているのが情報をシステムに取り込み、一元的に管理するという考え方です。このような情報のデジタル化は「デジタルトランスフォーメーション」と呼ばれ、不動産領域では「不動産DX」とも呼称されます。
皆さんも是非、弊社の「リドックス」のような不動産テックを導入して、新しい業務スタイルを構築してみてはいかがでしょうか。
この記事は「クラウド賃貸管理ソフトReDocS(リドックス)」が運営しています。
私たちは、「不動産管理ソフトを活用することで解決できる課題」だけでなく「不動産管理に関わる全ての悩み」を対象として様々なことをお伝えしていきます。