賃貸マンションやアパートの募集図面(マイソク)をみると、「元付:0% 客付:100%」といった形で記載があります。不動産や賃貸業界の経験が豊富な方であれば見慣れた表ですが、不動産業界に入って間もない方にとっては馴染みのないものであるため、「?」となりやすい部分でもあります。
今回は、「賃貸仲介における元付け業者と客付け業者の仲介手数料の配分」について解説していきます。
賃貸仲介時の手数料についての規定(宅建業法より)
まずは、賃貸物件を仲介した場合の仲介手数料についての規定を宅建業法から見ていきましょう。
賃貸仲介(媒介)時の報酬については、第46条に記載があります。
【不動産取引の報酬について 宅地建物取引業法第46第4項 貸借の媒介に関する報酬の額】
宅地建物取引業者が宅地又は建物の貸借の媒介に関して依頼者の双方から受けることのできる報酬の額(当該媒介に係る消費税等相当額を含む。以下この規定において同じ。)の合計額は、当該宅地又は建物の借賃(当該貸借に係る消費税等相当額を含まないものとし、当該媒介が使用貸借に係るものである場合においては、当該宅地又は建物の通常の借賃をいう。以下同じ。)の一月分の1.08倍に相当する金額以内とする。
この場合において、居住の用に供する建物の賃貸借の媒介に関して依頼者の一方から受けることのできる報酬の額は、当該媒介の依頼を受けるに当たって当該依頼者の承諾を得ている場合を除き、借賃の一月分の0.54倍に相当する金額以内とする。
上記の規定により、賃貸物件の仲介の際に受け取ることができる仲介手数料の合計金額は、契約する物件の賃料1ヶ月分(+消費税)までとされています。
この規定については、マンションやアパートといった「住居用」の不動産のみならず、店舗やオフィスビルといった「事業用」の物件についても適用されます。
なお、仲介手数料を賃料の1.5ヶ月分や2ヶ月分として報酬を受け取る行為は「宅建業法違反」となります。
仲介手数料の負担割合「貸主:0% 借主:100%」の意味とは?
賃貸不動産の媒介(仲介)を行った場合に受け取ることのできる仲介手数料の上限について見ていきました。
では、先ほどの表に戻ってみましょう。
一般的に上段が「仲介手数料の負担割合」とされており、下段が「仲介手数料の受け取り配分」となっています。
「貸主:0% 借主:100%」となっているということは、対象不動産において発生する仲介手数料は「借主」が全て負担するということを表しています。
この表を見たときに「仲介手数料を貸主が負担することなんてあるの?」と考える方も少なくはないのではないでしょうか?
こちらの表記が必要な理由として、宅建業法の規定があります。
居住の用に供する建物の賃貸借の媒介に関して依頼者の一方から受けることのできる報酬の額は、当該媒介の依頼を受けるに当たって当該依頼者の承諾を得ている場合を除き、借賃の一月分の0.54倍に相当する金額以内とする。
上記の様に、宅建業法上では「通常、片方からもらえる仲介手数料の上限は0.5ヶ月分」としており、例外として「どちらかの承諾を得ている場合は1ヶ月分」もらっても良いとなっています。
そのため、貸主が仲介手数料50%を負担するということは、なきにしもあらずということになります。
※ただ、貸主が負担するケースは本当に稀で、私自身はそういった契約を見たことがありません。
借主が仲介手数料の100%を負担する旨の承諾を証するために、「本賃貸借契約の成立において、賃料の1ヶ月分(別途消費税)を支払うことを承諾しました」という文言が重要事項説明書の署名捺印欄の上あたりに記載して、「借主の承諾」を得ているという形をとっているケースがほとんどです。
仲介手数料の配分割合「元付:0% 客付:100%」の意味とは?
では、次に下段の仲介手数料の配分割合の「元付:0% 客付:100%」の意味について見ていきましょう。
多くの賃貸不動産の仲介において、関係する不動産会社は「2社」あります。
1社がオーナー(貸主)から空室募集の依頼を受けている不動産会社(元付会不動産社)で、もう1社が入居希望者を集客して物件を案内している不動産会社(客付不動産会社)です。
この2社間で、対象不動産の賃貸契約における仲介手数料をどのような割合で配分するかというのが、「元付:〇〇% 客付:〇〇%」の内容となります。
上記の表の様に「客付:100%」の場合は、対象の賃貸取引における仲介手数料は客付不動産会社が受け取るということを表しています。
物件によっては、「元付:50% 客付:50%」として募集している不動産もあり、その場合はお客さんからもらう仲介手数料を折半するという表記となります。
※こういった報酬配分の取引を「分かれ」と呼ばれていることもあります。
「元付:0%」ということは、元付の不動産会社はタダ働きなの?
「元付:0% 客付:100%」ということは、対象の賃貸不動産の取引において、元付不動産会社は仲介手数料を1円も得ることができないということになります。
では、1円にもならない仕事を元付の不動産会社は行うのでしょうか?
こちらの理由は大きく2つが考えられます。
- 管理している賃貸物件の稼働率を何としてもあげたいから、無報酬でも構わない。
- 仲介手数料とは別に、「新規成約事務手数料」などを貸主から受け取れるから。
1つ目が「管理物件の稼働率(入居率)をなんとかあげたい」からという理由です。
多くの不動産管理会社の回収した賃料の◯%を月額の管理委託料(PMフィー)として売り上げているかと思います。
「月額の不動産管理委託料として、いくらかは回収できるから今回は無報酬でも構わない。」「これ以上、空室が増えるとオーナーさんに顔向けできない」などの背景があるのかもしれません。
2つ目が、「新規成約時に他の報酬を得ている」といった場合です。
おそらく、「元付:0%」のほとんどのケースがこちらでしょう。
対象の賃貸物件の仲介手数料として、貸主と借主の双方から合わせて家賃の1ヶ月以上を請求することは業法違反ですが、「賃貸管理業務にもとづく入居者誘致業務」に対して報酬を得る場合は問題ありません。
手数料が「分かれ」としている物件については、貸主側から別途報酬を得ることができないため、借主から仲介手数料を折半しているというようなケースが想定されます。
まとめ
ここでは、「賃貸仲介時の手数料についての規定」「仲介手数料の負担割合」「仲介手数料の配分割合」について解説していきました。
まず、賃貸仲介においては受け取れる仲介手数料は「貸主・借主から合わせて賃料の1ヶ月分(別途税)」までという規定があります。(宅建業法第46条より)それ以上の金額を請求・受け取った場合は宅建業法違反となります。
次に、募集図面(マイソク)の右下にある表の上段は、「仲介手数料の負担割合」について表記されていることが一般的です。「貸主:0% 借主:100%」と記載されている場合は、対象賃貸物件で発生する仲介手数料は借主が100%(多くの場合、賃料1ヶ月分)負担するという意味合いになります。
表の下段には、受け取る仲介手数料の配分割合について記載されています。
「元付:0% 客付:100%」となっていた場合、仲介手数料は客付不動産会社が全て受け取るというない様になります。「元付:50% 客付:50%」となっていたら、仲介手数料は両者で折半する(分かれ)という取引であることを意味しています。
トラブルとして多いのが、「実は手数料別れの物件でした。」といったケースではないでしょうか?
仲介手数料はお金のやりとりになるため、お互いに敏感になりがちな部分です。適正に表記するとともに、不動産の基礎知識として覚えておくことが必要といえるでしょう。
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