所有しているマンションについて悪評がネットに書かれた場合、対応策はあるのか?
先日神奈川県座間市のアパートの一室で、入居者が女性9人を殺害し遺体を自室に隠していたというニュースは大きな衝撃をもって報道されました。
事件としても十分にショッキングな内容なのですが、不動産のオーナーや管理会社としては「もし、自分の所有(管理)する物件だったら...」と想像するだけでより一層恐ろしくなる話ですよね。
殺人、事故、自殺、火災...様々な理由はありますが、建物の敷地内で人が亡くなった物件は「事故物件」と呼ばれます。事故物件と知って喜んで入居される方は通常はいないですから、やはりオーナーとしてはあまり広めてほしくない情報です。
ところが、近年では「事故物件サイト」と呼ばれる事故物件の情報をまとめてインターネット上に掲載しているサイトが登場しています。
有名なサイトのひとつの「大島てる」は、平均して1日に100万回も閲覧されています。
利用者の投稿によって情報を集めているので、必ずしもすべての情報が正確ではありませんが、物件探しの際の参考にする方は意外と少なくないのです。
では、もしあなたの管理しているこのような事故物件サイトに掲載されて、「過去に殺人事件があって幽霊がでる」などと悪評を書かれてしまったしまったらどうでしょうか?
自分の物件に関する情報だから削除をさせることはできるのでしょうか?
今回は、もし自分の所有する物件が事故物件サイトに掲載されたときに、とりうる対策についてご紹介していきます。
事故物件の定義とは?
実は事故物件という表現は不動産業界が作った造語で、明確な定義はなく、あいまいです。
一般的に自殺や殺人、火災など「人の生命にかかわる重大な事件・事故が発生した物件」を指します。
事件性のない病死や孤独死、過失による死亡などがあった物件も含むのかははっきりとしていません。
近年社会的問題にもなっている独居老人の孤独死は、死後何日間放置したら告知すべきかという部分もあくまで媒介業者の判断による部分となります。
事故物件であることは契約者に教えなくてはならない?
不動産媒介業者は、賃貸借契約を締結する際に前述の事故物件のような「心理的瑕疵」がある場合は契約者に伝えなくてはなりません。これを「告知義務」と言って守らなかった場合は宅建業法に違反します。
告知義務を果たさずに契約を締結した場合、契約自体を解除されても致し方ありません。
心理的瑕疵は事故物件だけでなく、遺体焼却所、学校、墓地など、一般的にあまり好ましくない施設が近隣にある場合も含まれます。
実は「大島てる」を作った大島氏自身も元々不動産業を経営しており、「事故物件をつかみたくない」という思いから都内の事故物件情報をまとめていたのだそうです。
なお、この告知義務について「事故発生後、人を一人入居させたらその次の契約者には告知しなくてもいい」という話を聞きますが、実はこれも明確なルールはありません。
過去の判例より、慣習的にそのように言われていますが、正確には告知義務に期限はありません。
管理しているマンションやアパートが事故物件と広まるとどんな影響がある?
管理しているマンションやアパートが事故物件と認識されてしまうことは、不動産管理会社にとっても、不動産オーナーにとっては致命的ともいえることです。
せっかく決まりかけた入居希望者が逃げてしまったり、相場よりも低い賃料で募集活動をしなければならなかったり、現入居者や近隣住民からもクレームが発生する可能性もありますし、管理会社やオーナーとしては大問題です!
事故物件サイトへ掲載の取り下げ申請は可能だけれども、削除対応してもらえない可能性もあります。
では仮に自身の所有、管理しているマンションやアパートが事故物件掲載サイトに掲載されてしまった場合、その内容を削除することは可能なのでしょうか?
前述の大島てるの場合、ユーザー側に掲載内容を削除する権限はありません。但し、内容が正確でない場合は投稿によって修正を指摘することは可能です。
内容が事実でないと指摘があった場合、投稿の情報をいったん凍結し現地に出向いて関係者から話を聞くなどして、真偽を調査し、真実と判断した場合は掲載再開。
事故の内容が1真実でないと判断した場合は掲載を取り下げるようです。
つまり、サイト側の調査で真実と判断された場合は、削除は基本的に対応してもらえないということになります。
サイト側としては、間違った情報が初期に掲載される可能性は否定できないですが、Wikipediaなどと同様に誤った情報は関係者の指摘と調査によって修正・削除されるため、一ヶ月以上経過しても残っている投稿に関しては事実であると考えているようです。
事故の発生が事実の場合は削除することは難しいと言えます
前述のようにサイト側で正しい情報と判断したものについては、原則削除は対応してくれません。
過去に大島てるを相手に、掲載内容を名誉棄損として裁判を起こした不動産オーナーもいました。(掲載内容は事実であったようです)
横浜地方裁判所は大島氏の勝訴の判決を下しています。
平成23年4月12日横浜地方裁判所平成22年(ワ)第1336号損害賠償等請求事件判決
事故物件掲載サイト側もしっかりと事前に調査をしており、いい加減な情報を載せているわけではない為、事実の掲載内容を取り下げるように請求することはなかなか難しいでしょう。
事故物件情報はもはや隠せる時代ではないため、対応策はありません
運営者の大島氏自身が『隠蔽されている事故情報をこそ掲載する』ことがサイトの主旨と語っており、事実である場合はなかなか掲載の取り下げは難しいことはご理解いただけましたでしょうか?
もはや事故物件情報を隠せる時代ではなくなってきており、また借主も宅建業者も隠さず本当のことを教えてほしいのが本音です。
※貸主が心理的瑕疵の内容を知らせていなかった場合は宅建業者の責任とはなりませんが、やはり後からのトラブルを回避する為にも心理的留保にかかる可能性のある事項は説明しておきたいものなのです。
特に東京都23区内などの賃貸需要の高いエリアであれば、事故物件でも相場より賃料が安ければ住みたいという方も少なくはないでしょう。正直に説明して、納得してから契約してもらう方が後々のトラブルを防ぐこともできるはずです。
オーナーとしては、迷惑ともいえる事故物件掲載サイトですが、もはや情報を隠すことは困難な時代です。
特に近年では宅建事業者もコンプライアンスを遵守することに重きを置いていますし、下手をして宅建業法違反になんてなったらたまりませんから、事故物件の情報を隠そうとしたがらないようです。
自身の所有する物件で、事故物件が発生してしまった場合、文字通り「事故」として大幅な賃料の値下げは涙を呑んで受け入れて、しっかりと媒介業者に真実を伝えて専任媒介契約で新しい入居者を募るようにしましょう。
隠ぺいをしてもばれる時代だからこそ、情報はオープンにして、それでもいいという方を探す方向に意識を切り替える方が重要なのではないでしょうか?
この記事は「クラウド賃貸管理ソフトReDocS(リドックス)」が運営しています。
私たちは、「不動産管理ソフトを活用することで解決できる課題」だけでなく「不動産管理に関わる全ての悩み」を対象として様々なことをお伝えしていきます。