家賃滞納者へ催促を促す際の注意点(滞納督促で注意すべきポイント)

マンションやアパート賃貸経営をする上で起こりうるトラブルである入居者の家賃滞納。滞納者への適切な催促方法や注意点を解説しています。

滞納家賃の請求可能な範囲

賃貸住宅の借主が家賃を滞納している。そんなとき、必ず毅然とした態度で行わなければならいのが家賃の督促です。
しかし、強硬的な手段をとりすぎると法に触れてしまう可能性もありますので、慎重に行動しなければなりません。

そこで、今回の記事では法律で禁止されている督促行為と、適切な督促の方法について解説していきます。

家賃督促を電話で行う場合の注意点

督促の手段としてまず最初に挙げられるのが「電話」です。
借主が家賃を滞納している事実が判明した際、まずは電話で督促を行う貸主や賃貸管理業者の方も多いのではないでしょうか。
そこで、まず最初に「電話」での督促における禁止行為を紹介します。

家賃督促の電話を行う相手について

実は、電話による督促については、明確に法律で規定されているわけではありません。
しかし、「貸金業法」では債権の取り立てに対する規制について明文化されており、この法律は賃貸物件の家賃滞納督促を名指しで対象としているわけではありませんが、家賃の督促が「債権の取り立て」という性質を持っていることからして同様の規制を意識しておくべきだと考えられます。
まずは、貸金業法第二十一条の「電話」に関する文章をご覧ください。

第二十一条 貸金業を営む者又は貸金業を営む者の貸付けの契約に基づく債権の取立てについて貸金業を営む者その他の者から委託を受けた者は、貸付けの契約に基づく債権の取立てをするに当たって、人を威迫し、又は次に掲げる言動その他の人の私生活若しくは業務の平穏を害するような言動をしてはならない。

一 正当な理由がないのに、社会通念に照らし不適当と認められる時間帯として内閣府令で定める時間帯に、債務者等に電話をかけ、若しくはファクシミリ装置を用いて送信し、又は債務者等の居宅を訪問すること。

二 債務者等が弁済し、又は連絡し、若しくは連絡を受ける時期を申し出た場合において、その申出が社会通念に照らし相当であると認められないことその他の正当な理由がないのに、前号に規定する内閣府令で定める時間帯以外の時間帯に、債務者等に電話をかけ、若しくはファクシミリ装置を用いて送信し、又は債務者等の居宅を訪問すること。

三 正当な理由がないのに、債務者等の勤務先その他の居宅以外の場所に電話をかけ、電報を送達し、若しくはファクシミリ装置を用いて送信し、又は債務者等の勤務先その他の居宅以外の場所を訪問すること。

参考URL:電子政府の総合窓口e-Gov『貸金業法』

上記条文第3項によれば、正当な理由なしに家賃滞納者本人の電話以外に督促の連絡を入れてはならないと理解できますが、この「正当な理由」とはどんな内容なのでしょうか。
この「正当な理由」については、金融庁の『貸金業者向けの総合的な監督指針』において解説されています。

イ.法第21条第1項第1号

a. 債務者等の自発的な承諾がある場合。
b. 債務者等と連絡をとるための合理的方法が他にない場合。

ロ. 法第21条第1項第3号

a. 債務者等の自発的な承諾がある場合。
b. 債務者等と連絡をとるための合理的方法が他にない場合。
c. 債務者等の連絡先が不明な場合に、債務者等の連絡先を確認することを目的として債務者等以外の者に電話連絡をする場合。なお、この場合においても、債務者等以外の者から電話連絡をしないよう求められたにも関わらず、更に電話連絡をすることは「人の私生活若しくは業務の平穏を害するような言動」に該当するおそれが大きい。

ハ. 法第21条第1項第9号

a. 弁護士若しくは弁護士法人又は司法書士若しくは司法書士法人(以下「弁護士等」という。)からの承諾がある場合。
b. 弁護士等又は債務者等から弁護士等に対する委任が終了した旨の通知があった場合。

参考URL:金融庁『貸金業者向けの総合的な監督指針』

つまり、家賃滞納者本人から積極的に「職場や家族のもとに電話していい」と言われている場合や、本人の電話番号が変更されている場合には、本人に関係する電話番号に連絡を行ってもよいという理解ができます。

しかし、法第21条に「人の私生活若しくは業務の平穏を害するような言動をしてはならない。」と記載があることを考慮し、たとえ家賃滞納者本人の勤務先や家族の電話に連絡をするだけの正当な理由がある場合にも、電話の内容が督促である事実は伏せるべきでしょう。
なぜなら、督促の電話をしたせいで家賃滞納者の勤務先、あるいは家族における評価や人間関係が悪化し「私生活や業務の平穏が害される」可能性があるからです。
同様に、本人と連絡がつかないため連帯保証人に督促をする場合も注意が必要です。
どうしても連帯保証人の勤務先に電話しなければならない際にも、「督促」を明言するべきではありません。

まとめると、「どうしても連絡する手段がない」「本人によって積極的に認められている」とき以外は本人以外に督促の連絡を入れるのは控えるべきでしょう。
もし本人の連絡先以外に電話することになっても、それが「督促の電話」であると明言するべきではありません。

家賃督促の電話の頻度や時間帯について

先述した貸金業法第21条で「正当な理由がないのに、社会通念に照らし不適当と認められる時間帯として内閣府令で定める時間帯に、債務者等に電話をかけ、若しくはファクシミリ装置を用いて送信し、又は債務者等の居宅を訪問すること」が禁止されていることから、電話の時間帯には十分に配慮するべきでしょう。

この「内閣府令で定める時間帯」とはすなわち、深夜~早朝(午後9時から午前8時)です。
督促の電話をする際、深夜や早朝に連絡することは控えましょう。また、FAXやメールも同様ですので注意してください。

次に、電話の頻度についてはどの程度から違法性が高まるのでしょうか。

先ほど紹介した『貸金業者向けの総合的な監督指針』では、「反復継続して、電話をかけ、電報を送達し、電子メール若しくはファクシミリ装置等を用いて送信し又は債務者、保証人等の居宅を訪問すること」が「人の私生活若しくは業務の平穏を害するような言動」に該当する可能性が高いとされています。
つまり、電話で督促を行う場合には早朝・深夜帯を避け、同日に何度も連絡をしすぎないようにすることが重要なのです。

家賃滞納の督促状を送る場合の注意点

督促の手段として次にあげられるのが「督促状」です。電話での督促を行っても家賃の滞納が続く場合には、督促状を送るようにしている方も多いのではないでしょうか。
しかし、この督促状を送る際にも注意が必要です。

督促状を送る相手について

こちらについて、基本的な考え方は「電話による督促」と同様です。人の私生活を害するような行為であってはなりませんので、連帯保証人ではない親族や勤務先、友人宅等に督促状を送ってはいけません。
基本的には本人宅に送るようにしましょう。

督促状を何度も送る場合

貸金業法第21条において取り立て(督促)が「人の私生活を害するような行為であってはならない」ことが明記されている以上、常識の範囲を超えるほど督促状を送るべきではありません。

しかし、家賃滞納者が滞納している期間によって督促状の内容を変え、数回にわたって送ることは有効な手段です。
例えば、一週間滞納している借主に対していきなり「連帯保証人に連絡します!」だとか「遅延損害金を請求します」、「賃貸借契約を解除します」といった内容を記載した督促状を送るのは得策とは言えません。
最初から強いプレッシャーを与えすぎると、借主との関係が悪化してしまうかもしれません。

そこで、滞納から一週間程度の段階ではあくまでも「家賃未払いの連絡」に焦点を当て、滞納期間が延びてきたところで具体的な対応策(連帯保証人への連絡、賃貸借契約解除の可能性)などを明言するべきではないでしょうか。

その他禁止事項

電話や督促状以外にも、禁止されている督促行為がありますので、その一例を紹介します。

  • ・賃貸物件に入室できなくする
    部屋の鍵を勝手に交換、もしくはドアロックをつけるなどして家賃滞納者を入室できなくする行為は絶対に控えるべき行為です。民事法上の概念「自力救済禁止の原則」によりこういった対応は禁止されており、実行者が住居侵入罪や器物損壊罪に問われる可能性があります。
  • ・第三者に督促の依頼をしたり、家賃を回収させる
    第三者を代理において督促、家賃の回収を行わせる行為は「法律事務」に該当しますが、この「法律事務」というのは、基本的に弁護士や司法書士以外行うことができません。よって、どうしても第三者を通じて督促を行わなければならない場合には、事前に法律のプロに相談しておくべきでしょう。
  • ・家賃滞納の事実を本人以外に公開すること
    家賃滞納者のポストや部屋のドアに督促の内容を知らせる文書を張り付けるなどしてはいけません。これを行ってしまうと、重大なプライバシー侵害行為にあたります。理由は簡単で、本来「家賃滞納問題」は貸主と借主、もしくは賃貸管理業者の間における問題にもかかわらず、誰にも見える形で張り紙などしてしまうと、まったく関係のない第三者が知り得てしまうからです。

家賃督促はどのような流れで行うのがベストか

ここまで家賃滞納の督促に関して、その禁止行為を紹介してきましたが、本来督促とは、どのように行うのが有効なのでしょうか。

基本的に、電話による督促も督促状による督促も、法的な効果は変わりません。とはいえ、家賃滞納から一週間も経過していないような場合には、単純に支払いを忘れているだけの可能性もありますので電話で「支払いを忘れていないか」確認してみましょう。
ただし、たとえ滞納から間もない時期であっても、いつまでに支払い、連絡すればいいのかなどの「期日」をしっかり設けるようにするべきです。
なぜなら、期日を設けないと、「家賃を今すぐ支払わなければならない」という認識が薄いあまりまた滞納を続けてしまう可能性があるからです。

そして、残念ながら一か月以上の滞納が発生した場合には督促状にて具体的な対策を明示しましょう。
「いつまでに振込が確認できない場合は連帯保証人への連絡を実施します/賃貸借契約の解除を検討します/遅延損害金を請求します」などを記載するようにしてください。
家賃滞納を続けることのデメリットを滞納者にきちんと認識させてあげることが重要です。

まとめ

家賃滞納が発覚した場合には、それ以上滞納を続けさせない、繰り返させないためにも毅然とした態度で家賃を支払ってもらうべきですが、法律に違反してしまうような督促行為をしてしまうと、問題は家賃滞納に留まらず、裁判や損害賠償などの余計なトラブルを発生させてしまいかねません。
どのような督促行為が、どのような法的根拠のもとに禁止されているのかきちんと認識した上で、適切な督促を実施するようにしましょう。

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