〇〇号室の契約者さんの家賃滞納分が3ヶ月分にもなってしまった。何とかしてこれまでの滞納家賃を回収したいんですが何かいい方法はありませんか?
連帯保証人じゃないけど、契約者さんのお父さんやお母さんに滞納家賃を請求するのは大丈夫なのでしょうか?
マンションの契約をしてから、徐々に毎月の家賃の支払いが遅くなったり、家賃の一部しか支払わなかったりする入居者さん。何度か、滞納督促や催促の連絡をするけれど中々電話も繋がらない。また、連帯保証人に電話をしても「まず、契約者に言ってよ!!」となってしまってなかなか取りつく島もないような形。
こんな時に、連帯保証人ではない、その人の親族(配偶者やお父さん・お母さん)などに家賃の請求を行っても大丈夫なのかな?といった悩みを耳にしたことがあります。
今回はそんな「連帯保証人以外への滞納家賃の督促」について説明していきたいと思います。
基本的な考え方について
まず、「賃料」とはどういったものなのかについて少し考えてみましょう。
【家賃とは】
家賃は賃貸住宅を始めとする賃貸物件の賃貸借契約に基づく物件の使用における対価のこと。借用者が物件の所持者(管理者)に対して支払うものを指し、通常は通貨で支払われる。
参考URL:家賃 - Wikipedia
借主(入居者さん)が貸主(大家さん)にそのマンションやアパートを利用することに対する対価として払うものが「家賃」です。
そして、その家賃額や支払い方法、契約期間などを明文化したものが賃貸借契約書となります。
つまり、入居者さんは毎月、大家さんに対して家賃の支払い義務(債務)があるということになります。
そして、その家賃支払い債務を保証する立場として連帯保証人が存在します。
よって、家賃の支払い責任があるのは「契約者」と「連帯保証人」の2人(場合によっては複数)が大家さんに対して義務を負っています。
このことから、大家さんが「契約者」や「連帯保証人」以外の人に請求したとしても、その第三者に家賃の支払い義務はありません。
※支払いを「請求」することは自由ですが、支払われなかったとしても何も言えないということです。
もちろん、親族の方が善意で代わりに家賃を支払うということは考えられます(親が子供に代わって払ってあげるといった状況)が、支払いがなされなかったとしても「親だから」「親族だから」という理由だけでは支払いを追求することはできません。
民法第761条 日常家事債務について
上述の通り、契約者や連帯保証人ではない第三者に対しては「請求」することはできても、支払い義務がないため断られればそれで終わりです。一部例外として、婚姻共同生活のための行為(日常家事)から生じた債務について、その夫婦は共同して責任を負わなければならないという判例があります。
【日常家事債務とは】
夫婦の一方が日常の家事に関して第三者と法律行為をしたときは、他の一方は、これによって生じた債務について、連帯してその責任を負う。ただし、第三者に対し責任を負わない旨を予告した場合は、この限りでない。
参考URL:民法第761条 - Wikipedia
この「日常家事」の例としては、衣食住などの生活に必要なものの購入、子の養育・学習に必要なもの・家族での娯楽などにかかる費用などがあげられます。
住んでいるマンションの家賃が「日常家事債務」として判断されれば、配偶者のどちらかが契約者や連帯保証人になっていなかったとしても、この民法第761条が適用され、大家さんから家賃の請求があった場合、その支払い義務を負うことがあります。
もし、大家さんや賃貸管理会社の担当者さんで、滞納家賃の請求先について悩んでいる場合は、この日常家事債務が適用されないかを考えてみるのも解決策の一つになるかもしれません。
※どこまでの範囲が「日常家事債務」として判断されるのかは、その法律行為の種類や金額・夫婦の内部事情などによって左右されるため、具体的な相談については士業の方にご相談ください。
まとめ
ここでは、「滞納家賃の請求可能について」「家賃滞納分を日常家事債務として配偶者へ請求することができるか」について解説していきました。
まず、賃貸借契約書に連帯保証人と定めている場合や連帯保証人承諾書などによって、対象契約の連帯保証人となっている人に契約者が滞納している家賃分を大家さんや不動産管理会社が請求することは可能です。
連帯保証人は自分じゃなくて契約者から取り立ててよ!というのはできません。
親族(親や兄弟)に請求することも可能ではありますが、連帯保証になっていない場合は支払う義務は発生していないため、断られたらそれ以上の請求を行うことはできません。
賃貸管理会社としては1ヶ月以上の家賃滞納となった段階で、契約者に「連帯保証人へ滞納分を請求させていただきます」と一言告げて、連帯保証人への請求に行うのがベターであるといえます。滞納家賃を請求できる範囲を理解した上で、適切に滞納管理を行っていくことは不動産会社にとって重要な業務です。
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