近年、賃貸物件の募集図面などに「保証会社利用必須」の一文をよく見かけます。
家賃保証会社を利用した賃貸借契約の件数は増加傾向にあり、全国賃貸住宅新聞の調査によると、調査対象の不動産会社からの回答では全体の60%が「保証会社を利用している」と回答しているそうです。
利用率増加の回答6割超す :: 全国賃貸住宅新聞
家賃保証会社は、元来借主が賃貸借契約の締結時に必要な保証人を用意できないときに保証契約を代行するための制度でした。 社会関係の希薄化や少子高齢化により、個人による連帯保証人制度の形骸化が進み、それを救済するというものです。
しかし、近年では滞納発生時に代位弁済を行ってくれること、滞納督促を代行してくれることなどから、貸主及び賃貸不動産管理業者の家賃回収業務を代行するという面が強くなってきています。
つまり、貸主側にとっては、面倒な滞納督促をしなくても入居者から家賃が回収できる、というメリットがあるのです。
ただ、家賃保証会社も民間企業の一企業であるため、当然倒産する可能性もありえるわけです。
2008年に当時業界ビッグ3の一画だった「リプラス」が倒産したことは記憶に新しいのではないでしょうか?
今回は、「家賃保証会社が倒産すると不動産管理会社やオーナーはどのような対応が必要になるのか?」について詳しく解説していきます。
そもそもなぜ家賃保証会社は倒産するのか?
前述のとおり、家賃保証会社は保証契約をしている契約者が賃料を滞納した場合、貸主(管理会社)からの事故報告をもとにして一時的に賃料を立て替えます。これを「代位弁済」と言います。
これは借主に代わって家賃保証会社が一時的に代位弁済しているだけで、その後、家賃保証会社が貸主に代わって家賃回収を行います。
この代位弁済した賃料を回収できないと、借主に代わって家賃を払っただけになるので、毎月毎月赤字を積み重ねることになってしまいます。しばしば問題になる家賃保証会社による過度の取り立てはこういった理由があるわけですね。
もちろん、家賃保証会社もこのような事態を招かない為に、新しく入居者と契約を結ぶ際の審査を厳しく行いますが、顧客獲得のために他社では審査を通らないような人を積極的に受け入れている会社や、保証料を安くしている会社も存在します。
そのため、通常の契約者よりも家賃滞納(事故発生)の確率が比較的高いといわれる為、回収できない金額の代位弁済が積み重なり、保証会社の支払い能力を超過してしまい倒産という結果にたどり着くのです。
さらに、家賃保証会社は保険会社と違って、十分な支払い能力があるかを監督する機関や制度が存在していません。また、多くの会社が未上場の為、決算内容を公表していないことも多く、健全な経営をしている企業であるか判断が難しいという面があります。
家賃保証会社が倒産するとどうなる?
家賃保証会社が倒産した場合、当然ですが借主と保証会社の間の保証契約は消滅します。
つまり、貸主から見ると借主は「無保証」の状態になるわけです。
賃貸マンションやアパートのオーナーとしては、無保証の借主と賃貸借契約を継続してしまうと、借主が無資力の場合、債務を代わりに弁済するよう請求する人がいないという状態になってしまいます。
※万が一滞納となった場合、保証をしてくる人がいなくなってしまう。
家賃保証会社が倒産すると、管財人が保証契約を継承してくれるほかの保証会社がいないか探してくれる場合もありますが、監査人が保証契約を引き継いでくれる保証会社を紹介してもらえない場合、貸主は新しく家賃保証会社と契約するか、契約者に新しく連帯保証人を立ててもらうようにお願いするしかなくなってしまいます。
滞納がある借主は拒否される可能性が高いです。
新しく保証会社を探す場合、例えば数か月にわたって家賃を滞納しているような契約者は保証契約の締結を拒否してくる可能性が高いと聞きます。
事故発生率が高いとわかっている借主とは、保証会社も契約したくないというのは当然のことです。
保証会社の受け入れ先が見つからない場合、貸主は、新しく連帯保証人を探してもらうように借主に求めることは可能ですが、保証会社に加入していないことや連帯保証人がいないことを理由に即賃貸借契約を解除することはできません。
そのため、無保証の状態で滞納リスクが高い借主と契約を継続するというリスクを負わなくてはなりません。
再契約時の保証料がトラブルになりやすい
また、過去に家賃滞納がない契約者関しても、新しい保証会社に対して再度初回保証料を支払う必要があります。
家賃保証会社の倒産は借主にとっては全く落ち度のない話ですので、一度支払った保証料をすんなりと払ってくれない方も少なくはないことが予想されます。
最悪の場合、泣く泣く貸主が保証料を負担するケースもあるようです。
また、新しい保証会社が見つからない場合などは、連帯保証人を立ててもらい、連帯保証人と契約を結ぶなどの契約作業も発生します。
家賃保証会社は確かに便利ですが、もし倒産してしまうと、貸主は金銭的にも作業量的にも多くの負担を背負うことになることを忘れてはいけません。
では、このような事態を避けるためには、どのような対応策をとっておくべきなのでしょうか?
最初の家賃保証会社選びが重要です!
家賃保証会社の倒産リスクを回避するためには、当然ですが最初の保証会社選びがとても重要になります。
保証会社と契約を結ぶ場合は、保証料の安さや、審査が通りやすいかという部分だけでなく、担当営業者に前年度の売上や代位弁済総額など、健全な経営状態にあるかを判断できる資料を用意してもらうようにしましょう。
保証会社+連帯保証人の契約も有効です
連帯保証人が立てられる方は、保証会社+連帯保証人の契約をお願いしましょう。保証会社が倒産しても、連帯保証人をともに立てておくことで無保証となるリスクを回避することができます。
連帯保証人を立てるのが難しい場合は、家賃保証会社をいくつか契約し、倒産時のリスクを分散しておくことも有効といえるでしょう。
まとめ
今回は、家賃保証会社が倒産するとどうなる?というテーマでお話をしてきました。
貸主や管理会社にとっては、大変便利な家賃保証会社ですが、倒産発生時には大きなリスクを抱えているということを理解しなくてはいけないということはお分かりいただけましたでしょうか?
「事故発生率の高さ」「代位弁済総額」「支払い余力」など、総合的に健全な経営をしている保証会社なのかを検討してから契約を結ぶことが大切ですね。
保証料が「賃料の30%以下」の企業や、保証範囲に「家賃滞納以外(原状回復費用や短期解約違約金など)も含む」といった企業は保証料に対して、保証範囲が広すぎる(収支のバランスが悪い)といえるかもしれません。o
また、近年ではオリコなどの信販系の企業が扱っている家賃保証会社や不動産業を本業とする会社が取り扱う保証会社も存在しています。
このような保証会社業以外に売上がある企業は、支払い余力が高いと判断できるのではないでしょうか?
賃貸経営のキャッシュフローを安定させるためにも、家賃未回収を防ぐために有効な保証会社制度の利用は今後も増加していくことが予想されます。便利なシステムだからこそ、しっかりとリスクヘッジを意識して活用していきたいところですね。
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