退去時の敷金精算に関するトラブルが発生してしまう原因として「契約内容の説明不足」が挙げられます。ここでは、トラブルを未然に回避する方法やトラブルが発生してしまった際の対応方法などについて解説していきます。
退去精算には、原状回復ガイドラインに沿った修繕負担区分を行うとともに、
精算時に必要となる費用を契約書に盛り込み、確実に説明することが重要となります。
お金に関するやり取りになるため、契約解約時の敷金精算はトラブル発生のリスクを含んでいる業務の一つです。
退去精算時のトラブルを未然に防ぐ方法として、以下の3つが挙げられます。
退去精算時に借主から出てくるクレームのフレーズとして「どうして原状回復にこんなに高い金額が請求されるの!?」といったものです。
国土交通省が発表している「原状回復ガイドライン」に沿った内容で費用負担区分を決めているのであれば、なんとか借主さんに納得頂けるように説得を行いますが、もし、借主負担を過分に請求している場合は注意が必要です。
アパートやマンションの賃貸管理会社も企業活動を行っているので、原状回復工事について幾分かの手数料を乗せることについては問題ではあるとは思いません。
ただ、借主の無知や経験不足に乗じて多額の原状回復費用を請求することは、トラブル発生の元凶となるため、適正な費用請求額を根拠を持って請求する必要があります。
今やインターネット上で原状回復に関するトラブルの相談事例とその回答も多数上がっており、借主もネット上の情報をもって知識武装して対抗してきます。
SNSや掲示板などに、管理会社名を名指して批判されてしまい、企業価値を損なう可能性もはらんでいるため、適正と考えられる費用区分で請求を行うことが求められます。
大成ユーレック社がWebページにわかりやすい図を掲載されていますので、引用・ご紹介させていただいております。
出典:賃貸経営で知っておきたい「原状回復ガイドライン」 | 土地活用・賃貸マンション建設・マンションリニューアル|大成ユーレック株式会社
また、入居期間(経過年数)を考慮せず、新品同様にする原状回復費用分を借主に請求するなども原状回復ガイドラインに反する部分となるため、費用按分を決める際には注意が必要です。
まずは、オーナー側・不動産管理会社側の起因によるトラブルは、原状回復ガイドラインを遵守することで一定数のトラブル発生を防ぐことが可能となります。
次に、クレームにつながるフレーズとしては「退去時にこんな費用が請求されるなんて聞いていない!」というものです。
不動産管理会社の担当者が、契約締結時に必ず立ち会っている場合や自社で契約業務をすべて取り扱っている場合は、案件数としては少ないかもしれませんが、重要事項の説明や契約内容の説明を不動産仲介会社が執り行っている場合に、こういったトラブルが発生しやすい傾向にあります。
このトラブルが発生しやすい具体的な事例として、「ルームクリーニングに関する特約」が挙げられます。
「ルームクリーニング」とは、借主が清掃して貸室を明渡したとしても、貸主側で業者を入れて清掃作業を行うことです。
なぜ、このルームクリーニングがトラブルが発生しやすいかというと、原状回復ガイドラインによれば「借主が通常の清掃を行ったのちに退去した場合の室内清掃費用(ルームクリーニング費用)は貸主の負担」であるとしています。
そのため、借主としては引越しの際に綺麗に掃除をすれば、ルームクリーニング費用は請求されないと考えている人も多くいます。
では、清掃している場合であってもルームクリーニング行い、費用を請求することは不可能なのでしょうか?
原状回復ガイドラインについては、「通常の原状回復義務を超えた負担を特約として規定することができる。」という記載があります。
つまり、ルームクリーニング費用については「特約」として規定することによって、退去時に借主に請求することができます。
しかし、これらの原状回復ガイドラインの規定を超えた部分を特約する場合は、以下の要件を満たしていなければなりません。
つまり、クリーニング特約を設定する際には契約時に「ルームクリーニング費用の負担は借主の原状回復義務を超えた部分」であるということを契約者に認識してもらうとともに、賃貸借契約書などに「クリーニング費用を負担する意思表示(署名・捺印)をしている」ことが必要条件となります。
逆に言えば、これらの要件を満たしていない場合は、退去時にルームクリーニング費用を請求することはできなくなってしまいますので契約内容や内容説明の際には注意が必要です。
最後にクレーム時に使われるフレーズが「これは、自分が入居する前からついていた傷です!」といった内容のものです。
例えば、入居者の不注意でクロスに傷をつけてしまった場合などは「借主」の費用負担にて原状回復を行います。しかし、入居者が自分の費用負担になるのが嫌なのでその傷が「元々ついていた傷」であると主張して、自身の原状回復義務を避けようとする場合があります。
数年間も入居している場合は、物件の管理担当者も変わっている可能性などもあり、その当時の部屋の状況を照明することはほとんど不可能です。
そのため、「この傷はもともとついていた傷です!」と言われた場合、それが本当か嘘なのかを判断することはできなくなり、クレーム対応は泥沼化してしまう可能性があります。
この、トラブルを回避するためには入居時に「現況確認書」を作成して、入居時の状況を記録として残しておくことです。
現況確認書に「入居当時からあった傷」を記載してもらうことで、退去時にどの傷が「入居当時からの傷」か「入居後に発生した傷」なのかを検証することができるようになります。
現況確認書を利用する際の注意点は、入居者が記載した現況確認書の内容が本当に貸室の実態を表しているのかどうかです。
むやみやたらに記載があって、それが適当に記載されたものでは、現況確認書の意味がありません。
悪意のある入居者であれば、あることないことを書いて退去時にごねてやろうという人もいる可能性があるため、提出された現況確認書が正しいかどうかを管理会社として判断する必要があります。
退去精算時のトラブルを未然に防ぐ方法・対応方法について「原状回復ガイドラインの遵守」「賃借人(借主)と契約内容の読み合わせ」「現況確認書の作成」の3つのポイントを踏まえながら説明していきました。
入居者にとっては、退去精算を経験することは人生において数えるほどしかありません。そのため、退去時に自分にどれくらい請求がくるのかという不安を少なからず持っています。そういった不安を解消してあげるために、契約時に原状回復費用に関する内容をきちんと説明してあげることが大切となってきます。
また、「言った言わない」といったクレームを避けるためには日頃からの入居者対応が重要となってきます。
これまでの管理に不満を持っている人であれば、退去時に少しでも多く管理会社から回収したやろうとあの手この手を行ってくる方もいます。そのため、マンションやアパートの入居者とは信頼関係を構築できるように日頃の賃貸管理が大切となってきます。
次回は、「契約解約、退去精算業務マニュアル」について解説していきたいと思っています。
文: Bamboooby株式会社 代表取締役 高田 圭佑
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