1-1 賃貸管理・不動産管理とは?

マンションやアパートの管理会社さんの仕事とされている「賃貸管理」業務ですが、その守備範囲は広くかつ高い専門性を求められる業務でもあります。ここでは、「賃貸管理とは?」「賃貸管理の主な業務やそのフロー」を踏まえながらご紹介していきます。

賃貸管理業務と一連の流れについて

賃貸管理における実務例と各業務の関係性について解説しています。

賃貸管理業務とは?

「賃貸管理」「不動産管理」と一口に言ってもその業務は多岐に渡るため、なかなかその内容を一言で的確に表す言葉はまだ無いように思えます。そんな賃貸管理業務ですが、大きく賃貸不動産における「ハード面の管理」と「ソフト面の管理」の2つに大別することができます。

  • ハード面の管理:ビルメンテナンス業務・ビルマネジメント業務(BM業務)
  • ソフト面の業務:プロパティマネジメント業務(PM業務)
プロパティマネジメント業務とビルメンテナンス業務

ハード面の管理(ビルメンテナンス業務とは)とは?

ここでは、賃貸不動産における「ハード面の管理」を、マンションやアパート、オフィスビルといった「建物」や「土地」といった不動産そのものを管理することを指しています。「建物の美観・衛生管理」「消防点検」「建物設備の保守管理」「修繕計画の立案や運営管理」「原状回復工事やリフォーム工事」といった業務が不動産管理における「ハード面の管理業務」と言えます。
より具体的な業務としては以下の様な実務が挙げられます。

  • マンションを清潔に保ち、入居者に快適に利用してもらう為に必要な「マンションの清掃」、や「ゴミなどの衛生管理」、「植栽の維持管理」
  • 「エレベーターの保守点検」や非常ベルや消化器などの「消防設備の維持管理」といった建築基準法上や消防法上必要な「法定点検」
  • 経年劣化に伴う「外壁や廊下のタイルの修繕」や給排水設備やガス設備、電気設備などの「設備交換工事」
  • 建物全体の維持保全を図るために必要な「大規模修繕の計画作成」や「修繕工事の管理やとりまとめ」
  • テナント退去後の貸室の「原状回復工事」や、不動産価値向上のための「リフォーム・リノベーション」 など

上記のような実務例が賃貸不動産そのもの維持・管理・運営に必要な「ハード面の管理業務」といえます。
また、これらの業務には、消防法や建築基準法、原状回復におけるガイドラインなどの法律や法令に対する知識とともに、建物の構造や設備部材、建築設備に関する知識が必要となってきます。もちろん、賃貸管理の担当者レベルではそこまでの内容を求められることは少ないかもしれませんが、何かの事象やトラブルがあった際に、「誰に相談すればよいのか」「どんなことを相談すれば良いのか」「どんな対応が必要となるのか」ということを正しくエスカレーションできるような体制を作っておくこと求められます。

私が前職の先輩に教えられていた言葉に「不動産は生き物である。」というものがあります。
何か大きなトラブルや出来事がなくても、建物は毎日のように変化しています。長い期間の雨風によって屋上の防水塗装も劣化していき、外壁の塗装も古くなってきます。誰も使っていない空室であっても、どこからか埃がやってきてフローリングを汚したり、結露によって建具を腐食させてしまうこともあります。長期間空室が続くと、排水溝の封水が枯れてしまって汚水のにおいが上がってきてしまうこともよく耳にする話です。不動産も生き物と同じように適切に手をかけてあげなければ、劣化の一途を辿るのみです。
エントランスのゴミは拾う。集合ポストがチラシで溢れないように対応する。共有部の管球が切れかかっている場合は交換する。といった日常的な対応が建物の維持管理を行う上で大切な業務でもあります。

また、賃貸不動産の「ハード面」を適切に管理することは、後述する賃貸管理における「ソフト面」の業務にも好影響を与えます。
物件の入居希望者が貸室の内覧に来た時に、集合郵便ポストが散乱してしまっていたり、何年も前の掲示物が放置されてしまっていたり、部屋の封水が枯れて異臭が立ち込めていたりすると、物件に悪印象を与えてしまい成約も遠のいています。そのため、建物自体の「ハード面」の賃貸管理は適切に運営・実施していく必要があります。

ソフト面の管理(プロパティマネジメント業務とは)とは?

「ソフト面の管理」とは、主にマンションやアパート・オフィスビルに入居している契約者やテナントに対する管理業務をさしています。「賃貸借契約に必要な書類作成・契約締結業務」「空室募集活動の立案・実施」「毎月の家賃回収と滞納督促」「入居者からのクレーム対応・近隣トラブルの対応」「契約の更新業務や退去解約業務」などが不動産管理にける「ソフト面の管理業務」といえます。
より具体的な業務としては以下の様な実務が挙げられます。

  • 賃貸借契約書や重要事項説明書、住宅紛争防止条例に基づく説明書、取引台帳などの契約書類の作成。
  • 空室募集に関するリーシングプランの立案と募集業務(マイソクの作成、レインズへの掲載、営業活動など)の実施。
  • 家賃の回収や入金状況の突き合わせ、家賃滞納者への督促、家賃保証会社への事故報告。
  • 入居者からのクレーム(騒音トラブルやゴミ出しに関するトラブルなど)、設備の不具合の対応。
  • 更新案内・更新合意書の作成、送付。更新料の請求。
  • 退去立会いや原状回復工事の発注・精算。借主負担割合に関する説明。など

建物の躯体や設備に関するハード面の業務に対して、建物の中身(契約管理や入居者対応、募集業務など)に関する実務が「ソフト面の管理業務」と言えます。
ソフト面への対応については、「対入居者」や「対不動産会社」「対オーナー」など対人についての業務がメインとなります。そのため、不動産業務に関する知識だけでなく、コミュニケーションスキルも重視される部分でもあります。もちろん、ハード面の業務においても、各業者間での調整などコミュニケーション能力は必要です。ただ、ハード面の管理業務よりもBtoCよりの業務が多くなってくるため、損得ではない「納得感」などを求められるケースも出てきます。

募集の担当者が何もせず募集されていること自体周知されていなければ、いくらキレイでハイスペックな賃貸物件であっても成約は難しくなります。満室経営でも、家賃滞納者を放置してしまえば、キャッシュフローを生み出しません。クレームに適切に対応できなければ、契約の解約につながってしまい賃貸経営の不安要素となってしまいます。
これらのソフト面の管理業務が適切に行われないと、賃貸不動産から利益を生み出すことができず、収支が悪化し「ハード面」に適切な費用をかけることが難しくなっていきます。

前述のように、ハード面を適切に管理することで、ソフト面にも好影響を与えると説明したように、ソフト面で適切な賃貸管理を実現できれば、確実な収入(キャッシュフロー)を生み出すことができ、その利益を設備の更新やリノベーションなどのバリューアップ工事に回すことができます。
このように、「ハード面」と「ソフト面」は自転車の両輪のように密接な関係で賃貸管理業務は回っていますので、片方の好影響はもう一方の業務に対しても好影響を与えます。

賃貸管理の主な業務と業務フロー

ここからは、賃貸管理の主な業務と一連の流れについて解説していきます。

空室募集業務(リーシング業務)

不動産管理会社の変更などで管理を引き継ぐ場合以外、管理物件は空室の状態からスタートします。
まずは、この空室にお客様が入居してもらえるように募集活動を行っていくところから始まります。人口減少と供給過多という状況から今後、日本全体で見た場合、空室率は上昇していくことが予想されます。そんな中で、いかにして他の競合物件にはない特徴・付加価値を生み出して、入居者を誘致できる力が賃貸管理会社に対して強く求められると考えられます。

  • 近隣の競合している賃貸マンション・アパートの募集状況の調査・分析。
  • 募集条件の提案・入居促進のキャンペーンの立案。
  • 自社管理物件を積極的に紹介してもらえるように、不動産仲介会社に営業・販促活動を行う。
  • 室内設備のリノベーション・バリューアップや共用部の改修提案。
  • 重要事項説明書や賃貸借契約書の作成、内容説明などの契約締結業務。など

家賃管理業務

募集活動が功を奏して、管理物件に新規入居となったら入居期間中と契約者管理業務が発生します。
入居期間の管理業務は多岐に渡りますが、その中でも重要な位置付けの業務として「家賃管理業務」があります。一般的に賃貸経営・不動産管理において、収入の大部分は毎月の賃料からとなっています。たとえ、満室経営を実現していたとしても、家賃が回収できなければ収支上はその部屋は空室と変わりありません。むしろ、重度滞納となってしまって明渡し訴訟などに発展してしまったら、裁判費用や機会費用の損失など、「空室にしておいたほうがマシだった。」ということもありえない話ではありません。
そのため、確実に家賃の入金状況は管理し、滞納している契約者には適切な督促を行って回収を行わなければなりません。

  • 家賃入金状況の確認・金額の突き合わせ・家賃管理表の作成。
  • 家賃滞納者の特定と滞納者の一覧作成。
  • 家賃滞納者への支払い督促業務。
  • 家賃保証会社への事故報告。など

契約更新業務

一般的には、契約期間の定められた賃貸借契約を締結しているため、賃貸借契約期間の終了が近づいている契約者に対して「契約更新」の意思の有無について確認の案内を行う必要があります。また、定期借家契約においては、貸主から契約を終了させるためには、少なくとも契約終了の6ヶ月前には通知(終了通知)を行う必要があるため、契約の終了時期の管理は賃貸管理業務を行う上で重要なものとなってきます。
普通借家契約の場合は、合意更新に至らずに契約終了日を越してしまった場合でも契約自体は法定更新(自動更新)され、契約者は保護されますが、更新料や事務手数料を請求する契約であった場合に更新通知が漏れてしまっていた場合などは、更新費用に関するトラブルに発展してしまう可能性があります。

  • 契約者ごとの更新時期の管理(月別の更新案内送付一覧の作成など)
  • 定期借家契約の場合は、契約の終了通知の作成・交付。
  • 更新のタイミングでの賃料アップ交渉。
  • 更新案内の送付・契約更新合意書の締結・更新料の回収。など

解約精算業務

普通借家契約においては、契約解約についてはほとんどが借主からの通知によるものです。解約通知の方法は、書面での提出でしか受け付けない場合や電話のみでも受け付けるなど、各契約内容や不動産管理会社によってまちまちですが、一般的には電話にて連絡を受けた後、「解約通知書」の提出を依頼するのが多いようです。
この解約通知書をもとに、「契約終了月の日割り賃料の計算」「解約希望日が解約予告期間を満たしているか」「短期解約違約金などはないか」「解約時に請求予定としていた費用は何か」を確認します。
その後、部屋の明渡しを受けて、原状回復費用やクリーニング費用を見積もっていきます。この時、退去時に入居者と工事業者立会いの元、対応が必要な箇所の特定や費用按分についての説明を行っておくことがベターです。
原状回復費用やクリーニング費用が確定したら、すでに預け入れらている敷金や保証金から償却する金額や工事費用、滞納分家賃などを差し引き精算した明細を契約者に交付して、精算を行います。
その後、空室となった部屋の原状回復工事の発注や次回募集条件の提案などの業務に移行していきます。

  • 解約通知の受付・契約内容の確認。
  • 解約合意書の作成・締結。
  • 退去立会い・原状回復工事費用の確定。
  • 貸主負担分・借主負担分の確定。
  • 敷金や工事費用の請求・精算。
  • 原状回復工事・ルームクリーニング工事の発注・完了確認。など

オーナー送金・報告業務

毎月月初に、回収した家賃や礼金、更新料などの収入項目と、賃貸管理会社の管理報酬(管理業務委託料、PM費用)や立て替えた工事費用、広告料を集計して、差し引き精算した金額の送金を行います。
また、送金を行う際に「精算対象となった明細一覧」の送付と共に、「保有物件の稼働状況」「各契約者の家賃支払い結果」「更新対応・解約対応一覧」「募集活動状況の報告」「その他トピックスの報告」などの報告を行うことがベターです。

  • 精算対象の月内で発生した取引の集計。
  • 送金明細の作成。
  • 各契約者の家賃支払い結果一覧表の作成。
  • オーナー報告レポート(マンスリーレポート・月報)の作成。など

まとめ

賃貸管理業務はここまで説明してきたように、

  1. 空室の募集活動(リーシング業務)
  2. 入居期間中の管理業務(家賃管理・更新管理・解約管理など)
  3. オーナー送金精算・業務報告(レポート業務)
  4. 空室となった場合は、1.の募集業務に戻る。

といった流れで業務は流れていきます。この中に入居者からのクレーム対応、設備の不具合に対する処置・対応、消防機器点検(6ヶ月に1回以上)といった業務が発生していきます。これらの業務が包括して「賃貸管理業務」や「不動産管理業務」と呼ばれています。
賃貸管理業務のカバーする範囲は幅広く、「宅地建物取引業法」「借地借家法」「建築基準法」などの不動産に関する法令に関する知識はもちろん、「民法」や「経理・財務・税務」といった分野についての幅広い知識やノウハウが求められます。
これら、全ての内容を網羅することは非常にハードルの高い内容です。そのため、自分がわからない分野について「いざという時に相談に乗ってもらえる専門家」を見つけて、有事に備えておくこと賃貸管理の担当者として大切なポイントであると言えます。
次回は、「賃貸管理業務の目的」について解説していきたいと思っています。

文: Bamboooby株式会社 代表取締役 高田 圭佑

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