3-4 契約更新対応マニュアル

更新対象者の特定から、更新案内書の作成・送付、更新料の請求、更新合意書の作成といった一連の更新業務の対応マニュアルです。更新業務の全体のフローや各業務段階でのポイントを踏まえながら更新対応業務を解説していきます。

契約更新業務の全体像をフロー図を利用して解説

賃貸借契約の更新業務をフロー図と共に解説しています。
契約の更新案内送付などについては、解約予告期間など考慮して対応に余裕を持って対応することが求められます。

賃貸借契約の更新業務フロー

まずは、契約更新業務の全体の流れから解説していきます。
業務の対応フローは以下の図をご参照ください。このフロー図をもとに各フェーズごとの説明を行っていきます。
※今回は「2年毎に契約を更新する普通借家契約の契約を締結している」場合について解説していきます。(定期借家契約の場合は、契約終了の案内は「契約期間終了の1年から6ヶ月までに」行う必要があります。)

契約更新業務フロー図

更新対象者はいるか「更新対象者の特定」【対応目安:契約期間終了日 - 解約予告期間 - 対応猶予期間から対応開始】

まずは、更新案内を送付する必要がある契約者がいるかどうかを特定します。
前回の「3-3 エクセルで契約更新表を作成する方法」でも解説したように、契約更新業務の開始日は以下のように表すことができます。

「契約期間終了日 - 解約予告期間 - 更新案内猶予」 = 「更新案内を実施する日」

前回作成した「契約更新表」や「賃貸管理ソフト」などを利用して、契約更新対応を行わなければならない契約者を特定して、対応を進めていきます。
契約期間が終了する直前に更新案内を行っても入居者さんもすぐには対応できなかったり、解約したかったけれども、解約予告期間を入れると契約が終了してしまうなどの場合、無用なトラブルとなってしまう可能性があります。
そのため、契約期間終了日から解約予告期間とプラスアルファの余裕を持って更新対応を行う事が望ましいです。

この「更新案内を実施する日」を迎えた契約者に対して「更新案内」と「更新合意書」を送付し、契約者へ契約更新時期が近づいていることを通知します。
契約更新案内書や更新合意書の例は以下のような書式です。

契約更新案内書
契約更新合意書

更新案内書と更新合意書を併せて送付し、更新する場合は「更新料の振込」と「更新合意書への署名・捺印後、一部返送」してもらうように依頼を行います。

契約更新をするか?【対応目安:契約期間終了日 - 解約予告期間までに回答】

更新案内を送付した場合によっては、「賃貸借契約の解約」の申し出がある場合があります。
その場合は、別途解説する「解約業務・退去精算業務」に移ります。

契約更新をする場合は、「更新料の入金」と「更新合意書の返送」をもって契約更新業務は完了です。
※もしも、上記2点がそろわず契約期間終了日までに更新業務が完了しなかった場合は賃貸借契約は「法定更新(自動更新)」となり、賃貸借契約自体は更新されます。なお、法定更新となった場合の更新後の契約条件は「従前の契約と同一の条件で契約を更新した」とみなされます。

更新料入金の確認・書類返送の確認【対応目安:契約期間終了日まで】

契約者に更新の意思がある場合は「合意更新」として、新しい賃貸借契約条件を明記した「更新合意書」を締結します。
※更新案内通知を送付後に、改めて更新合意書を送付するのも二度手間になるので、更新案内通知と併せて更新合意書を送付する形で問題はないかと思います。
※更新する場合は、署名捺印後に貸主控え分を返送。解約する場合は、2部とも返送。

あとは、更新料が振り込まれてるのを確認すれば、更新対応業務は完了です。
更新料については、更新料単体で請求を立てる場合や家賃とともに入金を依頼する場合がありますが、それは各不動産管理会社様の業務フローに併せて対応すれば問題はありません。

まれに、「法定更新になれば、期間の定めのない賃貸借契約となるから、以降の更新料は発生しない」ということを、他の不動産情報サイトや賃貸ブログで見て、合意更新に応じようとしないという契約者もいます。
そういった契約者の対応としては、「3-2 合意更新と法定更新(自動更新)について」で解説したように、契約条文のなかに法定更新された場合であっても、「2年毎に更新料が発生する」という明記することで対抗することができます。
逆に言えば、契約条文に法定更新に関する記述がない場合は、交渉が長引く可能性があるため、これを機に、契約書の内容をチェックされることをおすすめします。

まとめ

契約更新業務でもっとも重要なことは「更新対象者を漏らさない」ことです。
更新料収入は大家さんにとっても、賃貸管理会社にとっても重要な収益源の一つです。また、契約者自身も自分の契約終了日を明確に把握していない方も少なくはないため、マンションやアパートの管理会社側が契約の更新時期については適切に管理する必要があります。

「解約したかったけど、解約予告期間を入れると更新日を迎えてしまう」「契約の更新日(契約期間終了日)を数ヶ月過ぎてから更新料の請求を行う」となった場合は、契約者からのクレームに発展してしまう可能性があります。
更新料は契約賃料の1ヶ月分など、入居者にとっては決して小さくない金額です。できる限り、不動産管理会社側に落ち度がないように、スムーズに請求を行い、合意更新を行っていくことが求めれらるといえます。

次回は、「契約解約・退去精算について」を解説していきたいと思っています。

文: Bamboooby株式会社 代表取締役 高田 圭佑

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