2-1 家賃管理・滞納管理について

家賃管理の目的は、契約者から漏れなく家賃を回収してオーナー(貸主)へ送金することです。つまり、家賃回収率をどれだけ高く維持できるかということが大きなポイントなります、(逆に言えば、家賃滞納率をいかにゼロに近づけられるかとも言えます。)ここでは、家賃管理、滞納管理の概要を解説していきます。

家賃管理業務について

オーナーに代わって家賃管理業務を代行し、
安定した家賃収入を継続することが、家賃管理・滞納管理業務の目的です。

家賃は賃貸経営における収入の要

賃貸不動産(アパートやマンション、事務所ビルなど)を経営していく上で、家主・オーナーが最も気になるポイントは「家賃がちゃんと入ってくるか」についてです。賃貸物件の場合、収入のほとんどが「家賃収入」であり、ローンの返済や投資キャッシュフローなどについても毎月の家賃収入をベースに資金計画が考えられています。そのため、物件における「家賃収入を最大化」することは賃貸管理会社として大切な業務の一つとなります。

「家賃収入を最大化」する手段としては、「空室に入居者を誘致する」と「入居者から家賃を回収する」の2点が挙げられます。
空室からは家賃収入が得られないため、広く募集活動を行って入居者を誘致することで家賃を獲得するのが募集活動業務(リーシング業務)です。こちらについての解説は別の機会にさせていただき、今回は「入居者から家賃を回収する」について見ていきたいます。

「入居者から毎月家賃を回収する」
文字にしてみると当たり前のことで簡単な業務であるように見えます。しかし、世の中には入居時の契約金として前家賃を支払った後、一度も家賃を支払わず貸室を占有してしまうような人もいるのが現実です。このような、初めから悪意を持って入居する人とは別に、一度家賃を支払い忘れてしまっただけだけど、管理会社から連絡もチラホラしか来ないので、そのまま滞納を続けてしまうような人もいます。(軽度の滞納に味をしめてしまうというケースです。)
このように、なんらかの原因で滞納(支払い忘れ)をしてしまった人を、重度の滞納者にならないように、家賃の入金管理を確実に行い、迅速な督促業務を行うことが大切なポイントです。

家賃支払い方法の種類について

借主(入居者)からの家賃の集金方法については大きく「入居者から貸主の指定口座へ直接支払い」「入居者が管理会社の家賃管理口座へ支払い」「口座振替にて管理会社が回収」「管理会社へ借主が持参にて支払い」の4つに分類されます。各集金方法についての説明やメリット・デメリットをまとめると以下の表のような形となります。

家賃の集金方法 集金方法の説明 特徴・メリット・デメリット
入居者から貸主の
指定口座へ直接支払い
入居者が貸主の指定口座へ直接家賃を支払う。
この場合、管理会社の家賃口座への入金はない。
管理会社が倒産しても、家賃未回収となるリスクはない。
家賃入金結果の取りまとめに時間がかかる可能性がある。
家主・オーナー自身が滞納者の特定を行わなければならない。
入居者が管理会社の
家賃管理口座へ支払い
管理会社が貸主の代理として家賃を一括して回収。
その後に貸主へ回収分を取りまとめて送金。
管理会社自身で入金確認・消し込みを行うため、入居者個別の家賃支払い状況を把握することができる。
管理戸数が多いと、作業量が比例的に増えて行く。
口座振替にて
管理会社が回収
金融機関や第三者サービスを利用して、管理会社が入居者口座より引落しを行う。 自動引落しによって、効率的な家賃回収が可能。
振替結果データの取り込みなど、システムとの親和性が高い。
振替依頼の処理が漏れた場合、全員に振込を依頼しなければならない可能性がある。
管理会社へ借主が
持参にて支払い
管理会社が指定した場所へ借主が賃料を現金にて持参して支払う。 毎月、入居者とコミュニケーションを取る機会がある。
現金の受け渡しとなるので、金銭授受管理トラブルが発生する可能性がある。

これまで不動産管理会社様にお伺いさせて頂き、お話を聞いている中では「入居者が管理会社の家賃口座へ支払い」のパターンで、不動産管理会社が入居者からオーナーの代理として家賃を回収して、月初に管理報酬分や立替経費分を精算して送金するというのが多いように感じています。
ただ、現在は家賃の支払い方法(回収方法)も多様化してきており、「家賃の保証会社が回収して、滞納分は充当して管理会社へ送金」や「クレジットカードなどの信販会社を利用した家賃支払い」などといった方法も増えてきています。

家賃の集金方法については、オーナーや各賃貸管理会社それぞれと業務方針や地域慣習などを鑑みて規定されているので、メリットを活かしながら、デメリットを潰していくための施策を考えていくことが望ましいといえます。

家賃入金確認業務の流れ

では、ここからは具体的な家賃管理業務の流れや方法について解説していきます。
家賃管理を行うには、以下の情報が必要となってきます。

  • 契約者名(振込名義が別の場合はそちらも準備する)
  • 賃料
  • 共益費or管理費
  • 毎月必要な固定費用(引落手数料や月額保証料など)はあるか
  • 個別請求している費用(水道代や空調使用料など)はあるか
  • 契約期間
  • フリーレントの有無
  • 日割りの場合のルール(何日で日割りを行うのか、小数点以下の取り扱いについてなど)
  • 入金明細

上記の情報が揃ったら、入金情報の確認です。

  1. 入金明細の振込名義を見ながら、該当の家賃入金の契約者を特定する。
  2. 対象の契約者の当月の家賃請求額を計算する。(日割り計算やフリーレント分の計算など)
  3. 実際の入金額と当月の家賃請求額を照らし合わせて、過不足がないか確認する。
  4. 対象の契約者について「入金日」「入金額」「滞納・過入金の有無」を記録する。
  5. 次の入金明細にみて、①の作業を行う。

上記の業務を、賃料の支払い期日の15時以降に通帳記帳(ネットバンキングでの明細確認など)を行って入金確認業務を進めていきます。
※15時以降の入金については、翌日の入金処理となるため、当日の最終結果を知るために15時以降に記帳を行うことがベターです。
家賃の入金確認業務において重要なのが、「確実性」です。未入金者には順次、未入金の連絡を行っていくのですが、実際に入金していたのに、管理会社側の確認ミスで連絡をしてしまった場合などは入居者にとっては気持ちのいいものではありません。無用なトラブルを避けるためにも、家賃の入金確認はダブルチェックを行うなどの業務フローを構築していく必要があります。

家賃の入金確認が完了したら、入金結果を取りまとめて、家賃未入金者(滞納者)へ順次連絡を行っていきます。
賃貸借契約後、初めての家賃入金で忘れてしまっていたり、家賃支払い期日が土日などで振込日に過ぎてしまったという軽度の滞納者を重度滞納とならないように、滞納督促は早めの対応が必要となります。
また、未入金者と連絡が取れた場合は、「いつまでに入金をしてもらえるか」の約束を取り付けましょう。できる限り、支払い期限の間隔は短く切って、入金を促していく必要があります。
家賃の未入金者だからといって、高圧的に接することはNGですが、変にへりくだる必要もないので、入居者に理解を示しながらも毅然とした態度で対応することが大切です。

まとめ

空室募集業務(リーシング業務)と並んで、家賃収入に関する「家賃管理・滞納管理」業務。家賃管理は、賃貸経営を行っていく上での確実なキャッシュフローを守るために大切な業務の一つであり、オーナーには「家賃は100%回収できて当たり前」という意識が少なからずあります。賃貸管理会社として、確実かつ迅速な対応が求められる業務でもあります。

滞納管理・滞納督促業務については、振込忘れなどの軽微な滞納者であってもできるだけ早く連絡を行って、「きっちりしている管理会社なんだな」「ちゃんと家賃は期日に支払わないとダメだな」という意識を持ってもらえるように対応を進めていく必要があります。
賃貸管理会社によっては、「家賃入金確認を行う担当者」と「滞納督促を行う担当者」が別になっている場合も多いかと思いますので、担当者間の情報共有やコミュニケーションを密に行って、確実な家賃管理を行っていくことが求められます。

次回は、「エクセルで家賃管理表の作成方法について」について解説していきたいと思っています。

文: Bamboooby株式会社 代表取締役 高田 圭佑

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