3-1 賃貸借契約の更新について

意外と案内や請求の漏れが発生しやすく、煩雑になりがちな「更新業務」です。ここでは、そもそも「賃貸借契約とは何か」というところから、「契約形態の種類」、契約の更新についての概要といった内容について解説していきます。

契約の更新管理業務について

契約更新業務においては、管理物件の契約者の賃貸借契約の内容を把握して、
更新合意の締結・更新料、更新事務手数料の請求などを業務を適切に管理していくことが求められます。

そもそも、「契約」とは?

不動産や賃貸業界で日常的に使われている「契約」という言葉ですが、一度、この言葉の定義について見てみましょう。

大辞林 第三版の解説

けいやく【契約】

私法上,相対する二人以上の合意によって成立する法律行為。
債権の発生を目的とするもののほか,身分上の合意や物権的な合意も含まれる。典型契約・非典型契約・混合契約,有償契約・無償契約,諾成契約・要物契約等に区分される。
また,より広く合同行為も含めた,複数の意思表示によって成立する法律行為を意味することもある。

出典:契約(けいやく)とは - コトバンク

さすがは、大辞林。なかなか、見慣れない言葉を使って少し難解な形で説明されています。
2行目以降は事例であったり、例外について言及しているものであるので、注目すべきは1行目の部分です。

「法律行為」と見ると、弁護士さんや司法書士さんなど法律の専門家しかできないようなことのようなイメージを持たれるかもしれませんが、これは、日常生活における「買い物」や友達との「約束」も立派な法律行為の一つです。
「契約」をより噛み砕いて言えば、「約束事」や「取り決め」という言葉が適切でしょう。
また、「契約」というと契約書や覚書、念書などへの署名捺印が必要であるように見えますが、口頭での約束事も「契約」としての法的効力は発生します。

賃貸借契約の内容と種類について

さて、話しを戻して、不動産業界・賃貸管理業界において度々出てくる契約といえば「賃貸借契約」です。
では、「賃貸借」という言葉の定義について見ていきましょう。

デジタル大辞泉の解説

ちん‐たいしゃく【賃貸借】

当事者の一方が、相手方にある物の使用・収益をさせることを約束し、相手方がこれに対して賃料を支払うことを約束することによって成立する契約。

出典:賃貸借(ちんたいしゃく)とは - コトバンク

つまり、貸主(大家さん・物件の所有者)が貸室(区画の場合も)を使っていいよという許可を出す代わりに、借主はその対価(賃料)を支払うことを約束することを「賃貸借契約」といいます。
また、不動産・賃貸における賃貸借契約には「普通借家契約」と「定期借家契約」の2つが代表的な契約形態です。
※他に「一時使用貸借契約」や「借地契約」「店舗設備リース契約」などありますが、今回は上記2つの契約形態について解説していきます。

普通借家契約 定期借家契約
契約の期間 1年以上であれば自由
※契約期間を1年未満とした場合には、「期間の定めのない契約」として取り扱われる。
自由
契約締結方法 口頭での契約締結は可能。
※但し、宅地建物取引業者が取引の媒介などを行う場合は必ず契約書の交付しなければなりません。
必ず、契約書とは別に「契約更新が無いこと」「期間の満了とともに契約が終了すること」を書面を交付して借主に説明しなければなりません。
※これを怠った場合は、普通借家契約として扱われる。
契約の中途解約 【借主からの解約】
契約・特約事項に従う。
※住居契約では1〜2ヶ月前予告での解約が一般的です。
【貸主からの解約】
6ヶ月以上の解約予告期間と貸主に正当な事由がある場合のみ。
【借主からの解約】
基本不可。
※特約事項で中途解約を認めている場合はそちらに従う。
【貸主からの解約】
基本不可。
契約の更新 契約期間中に更新後の賃貸借契約条件の合意に至った場合
→「合意更新」
契約期間中に更新後の賃貸借契約条件の合意に至らなかった場合
→「法定更新(自動更新)」
不可
貸主は期間満了の1年前から6ヶ月前までの間に、借主に契約が終了することを通知しなければならない。
※貸主が認めた(合意に至った)場合は、再契約することは可能です。

上記の表が「普通借家契約」と「定期借家契約」のそれぞれの特徴についてまとめたものとなります。
契約の更新管理業務においては、これら2つの契約形態の特徴を確実に把握しないと適切な業務を行うことはできません。
貸主と管理会社間での管理委託契約の内容にもよりますが、貸主からもらえる更新事務手数料は決しておろそかにすることはできない収益源の一つです。その更新料は、確実に契約の終了時期などを管理して入居者に対して更新料を請求していかなければ回収することができません。
また、更新料は賃料の1ヶ月分など、決して入居者にとっても小さくない金額となるため、無用なトラブルを避けるためにも更新に関する案内や請求が漏れることは防がなければなりません。

更新の案内が漏れてしまった!! こんなときどうする!?

契約者一覧を見返してみたら、契約期間の終了時期が過ぎているのに未対応の契約者がいたことが発覚!
こんなときは、どのように対応すれば良いのでしょうか?また、契約自体はどのように取り扱われるのでしょうか?

【普通借家契約の場合】

まずは、契約内容を確認後、契約者に連絡を行いましょう。
普通借家契約の場合は、更新の案内や合意書の締結がされなかったとしても、賃貸借契約は法定更新(自動更新)されているので、入居者さんは住み続けることができます。
この時に重要なのが、契約書の内容です。もしも、契約書内に「法定更新された場合の記述」がない場合は、期間の定めのない賃貸借契約となるため、次回以降の更新料を請求することができなくなります。もし、法定更新時の記載がない場合は、更新合意書などで「更新後の契約条件」について双方の合意を締結する必要があります。
法定更新(自動更新)されたとしても、更新料の請求を行うことは可能です。しかし、入居者さんからすると請求漏れなのにいきなり「早急に支払ってください!」などと言われるとトラブルになってしまう可能性があるため対応は慎重に行う必要があります。

【定期借家契約の場合】

定期借家契約であっても、まずは契約内容を確認の上、契約者へ連絡を行います。
但し、定期借家契約の契約終了を主張するためには、1年から6ヶ月前に貸主からの解約の意思表示が必要です。
そのため、契約を終了させる(再契約する場合でも同じ)ためには、どんなに早くても発覚から6ヶ月の時間は必要となります。
また、定期借家契約でも、契約期間を過ぎても借主はその物件に住み続けることは可能です。(逆に、契約期間が終了している場合、貸主から6ヶ月後に解約する旨の意思表示がなされた場合は退去しなければなりません。)
定期借家契約にしているということは、貸主側で何かしらの意図を持って行っている場合が多いため、定期借家契約の終了時期の管理は確実に行わなければなりません。もし、その通知が漏れてしまった場合は、丁寧かつ迅速な対応が必要です。

まとめ

今回は、「契約とは?」「賃貸借契約の種類について」「更新案内・終了通知が漏れてしまった場合」などについて解説していきました。
更新管理業務は、管理物件や戸数が増えてくると契約者の終了時期の管理はかなり煩雑になり、作業の漏れが発生しやすい業務の一つです。また、賃貸管理会社として貸主からもらえる更新事務手数料の売上は確実に回収すべき費用であるとも言えます。

基本的に、更新の案内などが漏れてしまったとしても「借主」にとっては特段不利益となることはありません。(合意に至らなかったとしても自動更新されるなど、借地借家法などで保護されているため)しかし、定期借家契約の解約通知漏れや更新料の回収漏れは貸主や管理会社としては必ず防がなければなりません。
日常的に発生する業務ではなく、契約形態や契約期間によって柔軟に対応する必要があるため、なんらかのツール(エクセルや賃貸管理システムなど)を活用しての更新管理を行うことが好ましいといえます。

次回は、「合意更新と法定更新(自動更新)について」について解説していきたいと思っています。

文: Bamboooby株式会社 代表取締役 高田 圭佑

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