1-2 賃貸管理業務の目的

どんな意識をもって対象の業務・実務に取り組むかによって、得られる成果は異なってきます。それは、不動産管理業務の場合においても同様のことが言えます。ここでは、賃貸管理業務に対するマインドセットや管理業務の目的について紹介していきます。

「資産価値の向上」と「オーナー満足度」について

自分が行っている業務が、管理物件にどんな影響を与えられるのかを考えながら仕事を行うだけで、
その業務に関する成果や効率は大きく変わってきます。

賃貸管理の目的は何ですか?

「賃貸管理の目的は何ですか?」と質問された場合、どのような回答が思い浮かぶでしょうか?

  • 入居者さんに気持ちよく物件に住んでもらうため。
  • 建物を適切に維持管理して長持ちさせること。
  • 問題やトラブルをできるだけ減らして、何事もなく毎日を過ごせるようにすること。
  • オーナーさん(所有者)が満足するサービスを提供すること。など

きっと、上記のような回答が思い浮かんだりするのではないでしょうか。もちろん、こういった種類の質問については絶対的な回答は存在しないため、例で挙げた回答も間違っているものではありません。
そんな中で私が考える賃貸管理の目的は、「不動産の資価価値の向上のため」です。
賃貸管理における日常的な業務の全ては、この「資産価値の向上」に繋がっている(繋げていく)という意識を持って業務に取り組むことが、適切な賃貸管理業務の実施につながっていくと考えています。

「不動産は生き物である。」
1-1 はじめに -賃貸管理・不動産管理とは?-でも少し触れましたが、何も手をかけなければ、建物はどんどん劣化していきます。これは、マンションやアパートのような住居用の物件のみならず、オフィスビルや店舗物件などでも同じです。つまり、何もしていなくても「資産価値」は毎日少しずつ目減りしているような状況ということなのです。(むしろ何もしないことで、劣化が早まることもあります。)

1980年代のような時間が経てば不動産の価格がどんどん上がっていって、建物の経年劣化を上回るスピードで不動産の価値が上がっているような状況であれば、適切な賃貸管理を行わなかったとしても十分な資産として成り立つこともあります。しかし、人口減少・低成長の成熟社会においては、いつまでも不動産価格が右肩上がりにグングン上がっていくことは一部の地域を除いてはありえません。
今後、適切な賃貸管理・不動産管理を行っていかなければ、クライアントであるオーナーの資産価値を向上させることは難しくなってきているのが現状です。

賃貸不動産の資産価値とは?

では、賃貸不動産における「資産価値」とは何を指すのでしょうか?
一番わかりやすい指標は「この不動産を売却したらいくらになるか」です。
ご存知のように、不動産価格の算出方法には「原価法」「取引事例比較法」「収益還元法」の3つがありますが、ここでは、「収益還元法」を利用して計算しましょう。

  • 原価法:対象不動産と同様のものを建築した場合の価格から、築年数による減価修正を行って価格を決める。
  • 取引事例比較法:対象不動産と類似した不動産が現在、どれくらいの価格で取引されているかを参考にして価格を決める。
  • 収益還元法:対象不動産から得られる収入(家賃など)を想定利回りで割り戻して価格を決める。

収益還元法 計算例)毎月960,000円の家賃で8%の利回り想定の場合
960,000円 × 12ヶ月 = 11,520,000円(年間総収入)
11,520,000円 ÷ 8% = 144,000,000円(販売価格)
つまり、月に96万円の家賃収入がある物件であれば、1億4400万円の販売価格が算出されます。
この状況下であれば、賃料を毎月1万円あげることができれば、販売価格を150万円増加させることができます。
※上記は説明事例用にかなり簡略化した計算としています。

当たり前のことですが、賃料を上げれば上げるほど、販売価格、つまり資産価値は向上していきます。(キャッシュフローは度外視しているので、場合によっては、少し割引してでも空室を早く埋めるという選択肢が効果的な場合も往々に存在します。)

つまり、何かの施策を行う場合などでも「実施するものが賃料にどれだけ反映させられるか」ということは常に念頭にして考えることは大切です。これは、設備交換や外壁改修などのバリューアップ工事のときだけではありません。
現在、物件に入居してもらっている人たちに、どうすれば長く現在の賃料を払い続けてもらうことができるかということを考える必要があります。前述の通り、マンションやアパートを借りた日から今日まで、色々なところが傷ついたり劣化したりして、入居した時よりも古くなっているのは確実です。ただ、それでも入居時に設定した賃料を支払い続けてもらうためには、当たり前のことですが「丁寧に誠意を持って対応する」「物件は常に清潔に保っておく」ということを心がけて日々の業務に取り組むことが大切です。
「どうすれば今より高い賃料を獲得できるか」という問いかけと同じように、「どうすれば、現在の賃料を維持し続けることができるか」ということを考えることが賃貸管理の担当者に求められる問いかけでもあります。

賃貸不動産管理業は「サービス業」である意識を持つ

「資産価値の向上」という意識を持ち方についてここまで説明してきましたが、もう一つのポイントが賃貸管理業は「サービス業」であるということです。自分たちのクライアントである「オーナー」に満足してもらえるようなサービスを提供する必要があります。
どんなに効果的なプランを練って資産価値を向上できたとしても、オーナーの納得感や満足感がなければ片手落ちのサービスです。
「資産価値を上げる・維持する」という前提はあるものの、オーナーによっては単なる数字の向上ではなく、「管理会社さんと一緒に取り組んでいる」や「自分のために親身になってもらっている」という心理的な満足度を求められているケースも多く聞きます。

「前の担当者さんはよく顔を出してくれたのに」「○○さんはめっきり疎遠になってしまった」「一生懸命やってくれていたのは最初だけだ」
どんなに「空室を埋める」「クレームを未然に防ぐ」などの結果を出していたとしても、オーナーの心理的満足を提供しなければせっかくの成果も半減して伝わってしまうこともあります。「しょうもない」と感じる方も多いかもしれませんが「訪問回数」や「電話の回数」だけで自分たちの仕事振りを評価されているオーナーも現実として存在します。
ここで大切なのが、「オーナーの期待」を満たしてこそのサービスであるということです。

もちろん、「資産価値を向上させる」という経済的な成果を出さなければ、オーナーが精神的に満足をしていたとしてもそのビジネスは続きません。どんなにオーナーから信頼を受けていても、担当の賃貸不動産の稼働率が半分にも満たないなどでは適切なサービスを提供できているとは言えません。
この、「資産価値向上」と「オーナーの満足」という両方の目的を満たしてこその賃貸管理サービスと言えると私は考えています。
以下に、賃貸管理におけるサービスの質についてのマインドマップを作成してみたので、ご参照してみてください。

賃貸管理におけるサービスの質

まとめ

賃貸管理の目的とは「資産価値の向上」と「オーナー満足度の向上」の2点を挙げて説明してきました。
非常に多岐にわたる賃貸管理業務を毎日行っていると、「今の業務が何につながっているのか?」といったことがぼやけてくるときがあります。
そんな中でも、「自分が丁寧に対応すれば、少しでも長く入居してもらえるかもしれない」「物件の近くに行ったときには、少なくともポストはチェックして綺麗に保っておこう」「もう一軒、不動産会社回ったら管理物件にぴったりなお客さんを抱えているかも」と考えることが大切です。
不動産管理のように、日常の定型業務が多い仕事の場合、担当者がどんな思いを持って業務を行っているかで、業務の効率や成果は大きく変わってきます。「どうすれば、物件のためになるのか」「オーナーさんはどんなことが嬉しいのか」を考えながら、目的を持って管理業務を行うことが重要と言えます。

次回は、「家賃管理・滞納管理について」について解説していきたいと思っています。

文: Bamboooby株式会社 代表取締役 高田 圭佑

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